養老乃瀧

養老乃瀧株式会社

概要

養老乃瀧株式会社は、日本国内で居酒屋チェーンを展開する外食産業界における主要企業の一つです。東京都豊島区西池袋に東京本社を構え、創業以来長い歴史を持つ企業として知られています。

沿革

会社の起源は、1938年に創業者である木下藤吉郎氏（矢満田富勝氏）が長野県松本市で事業を始めたことに遡ります。その後、1951年に株式会社富士養老の滝として法人化が実現しました。事業拡大に伴い、1956年12月には神奈川県横浜市に記念すべき養老乃瀧の第1号店がオープンし、これに合わせて本社も横浜へ移転しました。現在、養老乃瀧株式会社として活動している法人は、1961年6月に養老商事株式会社として設立されたものです。

社名の「養老乃瀧」は、岐阜県養老郡養老町にある名瀑「養老の滝」に由来しています。この滝には親孝行にまつわる伝説があり、そこから名前を採ったとされています。

事業内容と店舗展開

養老乃瀧は、自社で運営する直営店のほか、1966年4月から開始したフランチャイズシステムを積極的に展開しています。このフランチャイズ店舗は、グループ内で「ファミリーチェーン」と呼ばれ、店舗数の多くを占めています。

提供されるアルコール類にも特色があります。プライベートブランドとして展開する「養老ビール」は、サッポロビールによるOEM製品であり、同社の主力商品である『サッポロ生ビール 黒ラベル』と実質的に同一のビールです。店舗で提供される生ビールもサッポロビール製が中心となっています。

2020年9月現在、養老乃瀧の店舗網は全国に広がっていますが、一部地域には未出店となっています。具体的には、富山県、福井県、岐阜県、奈良県、和歌山県、兵庫県、鳥取県、徳島県、香川県、そして沖縄県を除く九州地方には店舗がありません。

かつてはこれらの未出店地域の一部にも店舗が存在していました。特に香川県では、県内全域で展開していた有力なフランチャイジー「大丸食品」（百貨店の大丸とは無関係）が2003年2月に倒産したことにより、全ての店舗が閉鎖される事態となりました。その後、このフランチャイジーが経営していた店舗のうち、屋島店のみが2004年8月に直営店として一時的に営業を再開しましたが、残念ながら2006年には再び閉店しています。富山県、福井県、奈良県、鳥取県、福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県といった地域からも店舗が姿を消しています。また、九州地方で唯一の店舗だった大分県の高城店も、2019年頃に閉店し、これにより九州地方から完全に撤退することとなりました。

養老乃瀧グループは、主力である「養老乃瀧」ブランド以外にも、様々な業態の店舗を展開しています。2002年からは海鮮居酒屋「だんまや水産」、2008年からは低価格帯の「一軒め酒場」を展開。さらに、2021年からは韓国料理を提供する「韓激」を立ち上げるなど、多ブランド戦略を推進しています。

特色あるメニュー「養老牛丼」

養老乃瀧の歴史を語る上で欠かせないのが、「養老牛丼」です。これは1977年頃から、居酒屋としては比較的閑散とする昼間の時間帯を有効活用する目的で提供が始まりました。手頃な価格と味わいで広く親しまれ、1980年代初頭には牛丼チェーンの代表格であった吉野家と肩を並べるほどの人気を博しました。当時の価格は吉野家が300円程度であったのに対し、養老牛丼は200円という非常に安い価格設定が魅力でした。

しかし、いくつかの課題も存在しました。本来が居酒屋であるため、夜間は営業形態が変わり、また居酒屋の仕込みに時間を充てるため、夕方前には閉店してしまう店舗が多く、利用したい時間帯に行けないという声もありました。さらに、店舗によっては注文を受けてから具材を煮込むなど、他のファーストフードチェーンとは異なる調理スタイルが見られました。

2000年代に入り、牛丼業界で激しい価格競争が始まると、養老乃瀧は本業である居酒屋事業に経営資源を集中する方針を採り、養老牛丼はメニューから姿を消しました。

その後、多くのファンに惜しまれながらも一時的に消滅した養老牛丼でしたが、2016年11月15日から17日にかけて行われたチェーン化60周年記念キャンペーンにおいて、1日100食限定ながら期間限定で復活しました。価格は牛丼営業開始当時の200円に設定され、各日正午からの販売でした。初日はわずか5分で完売するなど、連日行列ができるほどの盛況ぶりを見せ、その根強い人気を証明しました。この反響を受け、養老牛丼は2017年11月、ついにレギュラーメニューとして正式に復活を果たしました。

関連会社

養老乃瀧グループには、関連会社として株式会社エル・アイ・システムズ（グループの情報ネットワークシステムの開発・運営・メンテナンスを担う）や株式会社バレーナが存在します。

長年にわたり日本の外食産業の一角を占めてきた養老乃瀧は、主力である居酒屋事業に加え、「養老牛丼」の復活や多様なブランド展開を通じて、時代の変化に対応しながら事業を展開しています。

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