馬鳴

馬鳴の生涯と業績

馬鳴（Aśvaghoṣa）は、後80年頃から150年頃まで生きた古代インドの著名な仏教僧侶であり、詩人としても知られています。彼はバラモンの家系に生まれ、社会的な地位を持つ者として、学問や議論を重んじる教育者としての道を歩みましたが、当初は仏教に対して否定的な見解を持っていました。

仏教への帰依

しかし、彼の理念は付法蔵の第11人目の師匠である富那奢との議論を通じて変化しました。富那奢に論破された結果、馬鳴は自らの誤りを悔い、舌を切って謝罪しようとしましたが、師の諭しを受けて仏教に帰依し、布教の道に進むこととなります。彼はその卓越した知恵によって、多くの人々を感化し、教えを広めていきました。

詩才と教化の活動

特に中インドの華氏城（パータリプトラ）での活動の中で、馬鳴は類まれな詩的才能を発揮しました。彼が戯曲「ラッタパーラ」を演じると、多くの市民が感銘を受け、無常の真理を悟りました。その影響は大きく、500人を超える王子や市民が出家の決断を下したそうです。このため、王は馬鳴の戯曲上演を禁止せざるを得なくなったというエピソードもあります。

カニシカ王との関係

その後、大月氏国（クシャーン朝）のカニシカ王が中インドを征服した際、馬鳴はカニシカ王と共に北インドへと旅をし、王の保護を受けながら仏教の教えを広めました。この時期、彼は人々から「功徳日」という尊称で呼ばれ、太陽のように徳のある存在として崇敬されました。

文献と著作

馬鳴の業績は多くの文献によって記録されており、特に「馬鳴菩薩伝」や「付法蔵因縁伝」といった伝記に多くの記述が見られます。彼の著作には、以下のような確実なものがあります。

• - 『ブッダ・チャリタ』：仏陀の生涯について書かれた詩で、サンスクリット版の後半部分は欠損しています。漢訳では『仏所行讃』として知られています。
• - 『サウンダラナンダ』：仏陀の兄弟ナンダの回心についての詩です。
• - 『シャーリプトラ・プラカラナ』：舎利弗と目連の帰依を描いた9幕の戯曲です。

また、彼の著作として『大荘厳論経』や『金剛針論』、『犍稚梵讃』などもありますが、これらの作品の真偽については学術的な議論が続いており、確信を持って語ることは難しいとされています。後に成立したとされる『大乗起信論』や『大宗地玄文本論』は時代背景から言っても明らかに彼の作品ではないことが認識されています。

結論

馬鳴はその生涯を通じて仏教の発展に寄与し、多くの人々に影響を与えた人物です。彼の作品や活動は、今なお仏教文学の中で重要な位置を占めています。

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