パータリプトラ

古代インドの心臓部：パータリプトラ - マガダ、マウリヤ朝、グプタ朝の栄華と衰退

パータリプトラは、現在のインド、ビハール州のパトナにあたる地で栄えた、古代インドを代表する都市です。サンスクリット語では「Pātaliputra」、パーリ語では「Pātaliputta」、ギリシャ語では「Palibothra」、中国では「華氏城」と呼ばれていました。マガダ国、マウリヤ朝、そしてグプタ朝と、幾度にもわたる古代インドの大帝国の首都として、その歴史はインド文明の盛衰を象徴的に物語っています。

マガダ国の隆盛：ガンジス川の恵み

紀元前6世紀から5世紀頃、マガダ国の王アジャータシャトルによって築かれたパータリプトラは、戦略的な立地がその発展を促しました。ガンジス川とそんらの支流の合流点に位置し、軍事拠点として、また交易の中心地として最適な環境にあったのです。特にガンジス川を渡河するのに有利な地点であったことは、その発展に大きく貢献しました。アジャータシャトルの後継者、ウダーイン王の治世には、それまでの首都ラージャグリハ（王舎城）からパータリプトラへの遷都が行われ、以後長くマガダ国の政治・経済の中心地として栄えました。

マウリヤ朝の絶頂：メガステネスの記録

紀元前4世紀、インド亜大陸を統一したマウリヤ朝は、パータリプトラをその首都と定めました。この時代、パータリプトラはインド最大の都市へと成長しました。ギリシャの使節メガステネスは、チャンドラグプタ王の治世中にパータリプトラを訪れ、その壮大な規模と繁栄ぶりを詳細に記録しています。彼の記述からは、高度に組織化された都市行政、精巧な都市計画、そして活気ある商業活動の様子がうかがえます。この時代のパータリプトラは、インドのみならず、周辺地域との交易拠点としても重要な役割を果たしていました。しかし、アショーカ王の死後、マウリヤ朝は衰退し、チェーティ朝やインド・グリーク朝といった勢力による侵攻を受けるなど、パータリプトラの地位も徐々に低下していきました。

グプタ朝の復興：再びインドの首都へ

西暦4世紀から6世紀にかけて、インド北部を統一したグプタ朝は、再びパータリプトラを首都として選定しました。グプタ朝時代には、文化・芸術の面でも大きな発展を遂げ、パータリプトラは再びインドの中心都市としての地位を回復しました。しかし、グプタ朝の後、インドは再び分裂し、パータリプトラは徐々に衰えていきます。かつての栄光は失われたものの、その歴史的遺産は現在のパトナに残る遺跡や史跡に今も息づいています。

パトナへの継承

現在のビハール州のパトナは、古代のパータリプトラの地に位置しています。古都の面影を残す遺跡や史跡は、古代インド文明の栄華と歴史を現代に伝えています。発掘調査による出土品からも、かつての繁栄の様子が垣間見られます。パータリプトラの歴史は、インド文明の壮大な物語の一部であり、その輝かしい歴史と衰退の過程を知ることで、インドの歴史に対する理解を深めることができるでしょう。

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