麦粒腫

麦粒腫（ばくりゅうしゅ）について

麦粒腫は、まぶたに発生する急性の炎症で、特にマイボーム腺やまつ毛の根元にある脂腺が影響を受けます。この疾患の原因の多くは黄色ブドウ球菌によるもので、発症するとまぶたに腫れや痛みが生じます。日本では一般に「ものもらい」や「めばちこ」と呼ばれるこの病気には、内麦粒腫と外麦粒腫の2種類があります。内麦粒腫はまぶたの内側のマイボーム腺にできるもの、外麦粒腫はまつ毛の根元にできるものを指します。

症状と経過

麦粒腫の主な症状には、まぶたの腫れや疼痛、かゆみが含まれますが、大抵は失明などの重大な症状にはつながりません。また、一般的には1〜3週間の間に自然に治癒することが多いです。しかし、症状が悪化したり、腫れが長引く場合には、眼科での診察が推奨されます。「ものもらい」という名称が、感染症のように誤解されることがありますが、実際には他者への感染リスクは非常に低いのが特徴です。細菌感染であるため、何かの拍子で細菌が目に入ると感染する可能性はゼロではありません。

また、農畜産業の分野でもこの病気は確認されており、特に老犬や馬に見られることがあります。

治療法

多くのケースでは、麦粒腫は特別な治療なしで自然に回復します。アメリカ皮膚科学会によると、基本は患部を清潔に保ち、触れたり擦ったりしないことが重要です。また、眼の周囲への化粧やコンタクトレンズの使用は避けて感染拡大を防ぐ必要があります。突然の痛みや腫れの悪化、また発熱が見られた場合は、医師の診断を受けることが大切です。自宅療養としては、布を温水に浸した温湿布を使い、腫れた部分に毎日数回あてることが推奨されます。

痛みがある場合には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤を利用することができます。もし患部が破れて膿が出た場合には、その治療のために抗生物質を飲むことや、軟膏を使用することがありますが、症状が軽い場合には抗生物質は不要です。

抗生物質として使用することができる薬には、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、アモキシシリンなどがあり、結膜炎の治療に使われるモキシフロキサシンも例外ではありません。また処方箋が不要なバシトラシンという薬も存在します。

日本における呼称

マイボーム腺の病気は、日本各地で異なった名称が使用されています。関東地方では「ものもらい」、大阪では「めばちこ」、京都や北海道では「め（い）ぼ」や「めっぱ」と呼ばれています。他にも地方独特の名称が多数あり、宮城県の「ばか」や佐賀県の「いぬのくそ」、熊本県の「おひめさん」といった例も存在します。

「ものもらい」や「めこじき」といった呼び名には、昔の迷信が関係しているとも言われています。何かを他人から恵んでもらうとこの病気が治るという信仰が広まった名残です。2004年にはロート製薬が全国調査を行い、その結果を公表しています。

このように、麦粒腫は比較的一般的な疾患ですが、適切に理解し対処することが大切です。

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