Κ機構

κ機構についての詳細

κ機構（かっぱきこう、英: kappa-mechanism）は、主にセファイド変光星やこと座RR型変光星などの特定の脈動変光星の脈動を引き起こす重要なプロセスです。このメカニズムは、恒星内部の不透明度がどのように変化するかに基づいており、特にイオン化の影響を受ける領域での物質の挙動に関わっています。

この名称は、物質の吸収係数や不透明度を示すギリシャ文字のκから取られています。星の中心部におけるイオン化領域では、密度がわずかに上昇するだけでも不透明度が増加します。これにより、恒星内部で生成されるエネルギーの吸収量が増加し、その結果、恒星の外層が加熱され膨張します。膨張が進むと、恒星の圧力、密度、温度が低下し、これが再び不透明度を下げる要因となります。この一連の変化が繰り返されることで、脈動現象が生じ、星の外層が脈動します。

κ機構による脈動は、主に水素やヘリウムが部分的に電離している領域で起こります。古典的セファイド変光星やこと座RR型変光星では、ヘリウムが2階電離している領域がこの現象の例としてよく挙げられます。また、ミラ型変光星や高速振動Ap星（roAp星）、くじら座ZZ型変光星では、水素の電離が脈動活動の主要な原因と考えられています。

さらに、ケフェウス座β型変光星については、鉄が非常に豊富な領域が存在し、内部の温度が約20万ケルビン（K）に達する際に脈動が引き起こされることが知られています。この鉄の増加による不透明度の変化は、天文学において金属量を表す記号Zを用いて「Z-bump」と呼ばれています。このように、κ機構は恒星の物理的状態に密接に関連しており、恒星の変光現象を理解する上で非常に重要な役割を果たしているのです。

このメカニズムは、恒星の進化や構造にも深い関わりを持っており、脈動変光星の観測や理論的研究において広く取り扱われています。特に、脈動の周期や振幅に関連するデータは、星の質量や年齢、金属量を推定する手助けとなっています。

参考文献

• - Princeton lesson on radial pulsation, with kappa and epsilon mechanism
• - Pulsating Stars: Stars that Breathe, Swinburne University of Technology presentation, 2010
• - John P. Cox (1963). On Second Helium Ionization as a Cause of Pulsational Instability in Stars. The Astrophysical Journal 138: 487. doi:10.1086/147661.
• - Stein, R. F.; Cameron, A. G. W. (1966). Stellar evolution.
• - John P. Cox (1980). Theory of Stellar Pulsation. Princeton University Press. ISBN 978-0-691-08253-0.
• - Andre Maeder (2008). Physics, Formation and Evolution of Rotating Stars. Springer Science & Business Media. ISBN 978-3-540-76949-1.

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