いすゞ・アスカ

いすゞ・アスカ：時代を彩ったセダン

いすゞ・アスカは、1983年から2002年まで販売された中型セダンです。その変遷は、いすゞ自動車の乗用車事業の歴史を映し出す鏡とも言えるでしょう。

初代（1983年-1990年）

フローリアンの後継車として登場した初代アスカ（JJ110/120/510型）は、ゼネラルモーターズ（GM）の「グローバルカー構想」に基づいて開発された、いわゆるJカーでした。オペル・アスコナCなどと姉妹車の関係にありましたが、実際には設計の多くがいすゞ、GM、オペルの3社で個別に行われました。そのため、外観や足回りこそ共通点が見られるものの、部品の共通性はほとんどありませんでした。

駆動方式は、いすゞの乗用車としては初のFF（前輪駆動）を採用。エンジンは直列4気筒SOHCで、ディーゼルエンジンも設定されました。特に、インタークーラー付きターボディーゼルエンジンは注目を集め、ガソリンターボエンジンは当時の同クラス車としてはトップレベルの加速性能を誇りました。

また、1984年にはいすゞ独自の5速AT「NAVi5」を搭載し、話題となりました。

海外へも輸出され、アジア、ニュージーランド、南米などで販売されました。

2代目（1990年-1994年）

2代目アスカ（BCK/BCL/BCM型）は「アスカCX」として登場。しかし、GMのグローバルカー構想が中止となり、いすゞ自体も新車開発が困難な状況にあったため、富士重工業（現SUBARU）からレガシィのOEM供給を受けることになりました。これにより、アスカはレガシィの兄弟車として生まれ変わりました。

3代目（1994年-1997年）

3代目（CJ1型）では、再び「アスカ」の単独ネームに戻りました。今度は、本田技研工業（ホンダ）との間で、ビッグホーンとミューのOEM供給と引き換えに、5代目アコードのOEM供給を受けることになりました。アコードとの主な違いは、エンブレムやフロントグリル程度でした。

4代目（1997年-2002年）

4代目（CJ2/3型）も、引き続きホンダ・アコード（6代目）のOEMとなりました。ベース車のアコードが5ナンバーサイズに戻ったことに伴い、アスカも5ナンバーサイズに回帰しました。アコードとの違いはごくわずかで、エンブレムやホイールのデザイン程度でした。

2002年9月、いすゞの乗用車事業からの完全撤退とアコードのフルモデルチェンジに伴い、アスカは販売を終了。19年の歴史に幕を閉じました。

車名の由来

車名の由来は、海外文化を吸収・消化し、日本文化の原点を築いた飛鳥時代から。GMの基礎設計に依存しながらも、いすゞ独自の味付けを施したという心意気を示しています。

アスカの英字表記は、ローマ字表記の「ASUKA」を「アシュカ」と誤読されるのを避けるため、「U」の文字を抜いた「ASKA」となっています。

アスカは、いすゞの乗用車事業の終焉とともに姿を消しましたが、その名は、日本の自動車史に確かに刻まれています。

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