いつかA列車に乗って

いつかA列車に乗って

『いつかA列車に乗って』は、2003年に公開された日本のドラマ映画です。本作は、1955年（昭和30年）に制作された内田吐夢監督の映画『たそがれ酒場』を原案としたリメイク作品にあたります。原作の舞台設定を現代に移し、新たな解釈で描かれています。

監督を務めたのは、テレサ・テンをはじめ、多くの歌手に楽曲を提供し、作詞家として数々のヒット曲を生み出してきた荒木とよひさ氏です。本作が、荒木氏にとって初めての映画監督作品となりました。

物語の詳細は明かされていませんが、キャッチコピーに「人生は，忘れものをさがす旅」と掲げられており、登場人物たちがそれぞれの心の中にある何かを探し求める旅路が描かれていると推測されます。人生の黄昏時を迎えた人々が織りなす人間模様が、現代の視点から深く掘り下げられています。

本作には、日本を代表する多くのベテラン俳優、そして新進気鋭の俳優陣が出演しています。主なキャストは以下の通りです。

梅田茂一郎：津川雅彦
丸山健一：加藤大治郎
アンナ：真矢みき
野口ユキ：栗山千明
中小路一夫：峰岸徹
志賀：愛川欽也
江藤欽也：渡辺匡
平松：小林桂樹
知恵：真由子
小倉：小倉一郎
波島：保積ぺぺ
岐部：春田純一
洋子：神野美伽
山口：石田太郎
ベティ：ベティ
谷口：中村育二
* 鱒見：俊藤光利

特に注目されるのは、劇中に江藤欽也役で出演している渡辺匡氏です。渡辺匡氏は、本作の音楽監修とテーマ曲の作曲も担当しており、これは数々の名曲を手がけた作曲家・三木たかし氏の本名です。三木氏は、作詞家である荒木監督とコンビを組み、テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」をはじめ、多くのヒット曲を生み出してきました。旧知の間柄である荒木監督からの出演依頼を当初は固辞したものの、最終的には出演を承諾。結果的に、この『いつかA列車に乗って』が三木たかし氏にとって最初で最後の映画出演となり、俳優としての遺作となりました。また、キャストの峰岸徹氏は、荒木監督と同じ日本大学芸術学部出身であることが知られています。

スタッフ陣も実力派が集結しています。脚本は原作の『たそがれ酒場』を手がけた灘千造氏の名前がクレジットされています。製作は鍋島壽夫氏、プロデューサーは貝原正行氏と柴田耕二氏が務めました。編集は大畑英亮氏、撮影は岡雅一氏が担当しました。音楽はデニスアンドマミが手がけ、前述の通り三木たかし氏が音楽監修を務めています。

この作品は高い評価を受け、公開翌年の2004年には第13回日本映画批評家大賞において、監督の荒木とよひさ氏が監督賞を、主演の津川雅彦氏が主演男優賞をそれぞれ受賞するという栄誉に輝きました。

製作は「いつかA列車に乗って」製作委員会が行い、東映東京撮影所などが協力、特別協賛として第一興商が名を連ねています。配給はシネマクロッキオが担当しました。

キャッチコピーにある「人生は，忘れものをさがす旅」という言葉が示すように、本作は観る者それぞれの心に静かに語りかけ、自身の人生や思い出、そして探し求めているものについて深く考えさせるような、情感豊かな人間ドラマとして記憶されています。

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