たそがれ酒場

映画『たそがれ酒場』

『たそがれ酒場』は、1955年に公開された内田吐夢監督によるドラマ映画です。戦後復帰2作目となる本作は、一軒の大衆酒場を舞台に、そこに集う人々の人間模様を実験的なスタイルで描いた群像劇として知られています。出演は小杉勇、小野比呂志、野添ひとみ、津島恵子など。

ストーリー

物語の舞台となるのは、多様な人々が集まる大衆酒場です。サラリーマン、学生、労務者など、様々な客がそれぞれの目的で訪れ、時にはステージで専属歌手が歌い、時には客が下手な歌を披露して盛り上がります。競輪で大穴を当てた客と元上官が軍歌を歌い出し、サルトルを論じていた学生と先生が「若者よ」を歌い出すなど、混沌とした雰囲気が漂います。

酒場の中心にいるのは「先生」と呼ばれる梅田。かつては戦争画で名を成しましたが、今はパチプロとして生計を立てています。酒場の女給ユキは、恋人の鱒見と、横恋慕する愚連隊との間で三角関係に悩み、母親の怪我で金銭的に困窮しています。

そこに、新日本歌劇団の中小路が訪れます。中小路は、酒場の専属ピアニストである江藤と過去に因縁があり、江藤の弟子である歌手の健一の才能を見抜きスカウトしようとしますが、江藤に反対されます。

さらに、専属の踊り子エミー・ローザが登場。歌手の健一と惹かれ合いますが、ままならない境遇に置かれています。エミーの過去のパトロンが現れたことで、事態は刃傷沙汰へと発展します。

ユキは梅田から金を借り、恋人を追って大阪へ高飛びしようとしますが、母親や妹を捨てることができず、酒場に戻ってきます。金を貸した梅田は、似顔絵描きで帳尻を合わせ、江藤に「年寄りは若い人の将来を摘んではいけない」と諭し、健一を新日本歌劇団へと送り出すことを決意します。

キャスト

梅田茂一郎: 小杉勇 - かつて戦記物で名を馳せた画家、現在はパチプロ。
江藤釿也: 小野比呂志 - 酒場の専属ピアニスト、かつて歌劇界の花形。
丸山健一: 宮原卓也 - 酒場のバリトン歌手、江藤の弟子。
谷口幸三: 有馬是馬 - 酒場のマネージャー。
汲島鉄夫: 多々良純 - 飲み食いをたかっている男、通称「小判鮫」。
野口ユキ: 野添ひとみ - 酒場の女給。
エミー・ローザ: 津島恵子 - 酒場のストリッパー。
中小路龍介: 高田稔 - 新日本歌劇団の団長。
鬼塚: 東野英治郎 - 元大佐。
岐部: 加東大介 - 鬼塚の元部下。
森本: 丹波哲郎 - 愚連隊、ユキに横恋慕。
鱒見: 宇津井健 - ユキの恋人。
山口: 江川宇礼雄 - 毎朝新聞の記者、梅田とは旧知の仲。
多賀: 中村彰 - エミーの元パトロン。
年輩の男: 山川朔太郎
年輩の男の二号: 岡崎夏子
講師: 児玉一郎

製作

脚本は新人の灘千造が担当し、ピアニスト役の小野比呂志、歌手役の宮原卓也は、それぞれ映画初出演の音楽家、声楽家です。映画全体を通して実験的な試みがなされており、内田監督の作家性が強く表れた作品と言えるでしょう。

関連情報

本作は、様々な人々が集まる場所を舞台にした群像劇という点で、映画『グランド・ホテル』との類似性が指摘されています。また、2003年には、舞台を公開当時の設定に翻案したリメイク作品『いつかA列車に乗って』が制作されました。

外部リンク

たそがれ酒場 - 映画.com
たそがれ酒場 - allcinema
たそがれ酒場 - KINENOTE
たそがれ酒場 - MOVIE WALKER PRESS
Twilight Saloon - オールムービー（英語）
Tasogare sakaba - IMDb（英語）
Tasogare sakaba (Twilight Saloon) - Rotten Tomatoes（英語）

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