うしお号

産交バス「うしお号」：天草を駆け抜けた快速バスの記憶

「うしお号」は、かつて産交バスが熊本県内で運行していた快速バスです。そのルーツは、本渡市（現天草市）と牛深市（現天草市）を結ぶ路線にありました。

天草の市町村合併が生んだ「市内完結」の快速バス

2006年3月27日、本渡市と牛深市、そして天草郡の8町（苓北町を除く）が合併し、天草市が誕生しました。これにより、「うしお号」は天草市内のみを走る路線となり、全国的にも珍しい「同一市内間を結ぶ快速バス」として注目を集めました。地元では、本渡地区では「牛深快速」、牛深地区では「本渡快速」という愛称で親しまれていました。

座席は座席定員制で予約は不要。気軽に利用できる点が魅力でしたが、2012年10月1日の改正をもって惜しまれつつ廃止されました。

38年の歴史

「うしお号」の歴史は1974年7月に始まりました。開業当初は1日4往復、本渡・牛深間を1時間29分で結び、地域の足として活躍しました。開設当初は、西海岸の岩場と天草灘の潮の流れをイメージしたヘッドマークが掲げられていました。

廃止と路線の統合

2012年10月1日、全便（平日6往復・土休日5往復）が廃止。「うしお号」の役目は、並行して運行されていた普通便（本渡バスセンター - 魚貫 - 牛深港線）と統合された、本渡バスセンター - 久玉 - 牛深港 - 牛深市民病院線（牛深港から区間延長）に引き継がれることになりました。これは事実上の種別変更と言えるでしょう。

魚貫系統においては、早浦橋 - 牛深港・牛深産交線を支線に置き換えられました。

運行情報

運行会社: 産交バス
担当営業所: 天草営業所・牛深営業所（両営業所共管）
* 所要時間: 本渡バスセンター - 牛深港 : 1時間17分

停車箇所（2012年9月30日廃止時点）

本渡バスセンター - 中央総合病院前 - 亀場小学校前 - 友尻 - 地域医療センター - 枦宇土 - バイパス宮地岳 - 新合 - 河浦高校前 - 一町田中央 - 運動公園前 - 河浦病院 - 白木河内 - 早浦橋 - うしぶか温泉 - 内の原 - 無糧寺 - 久玉 - 牛深高校前 - 総合体育館前 - 牛深産交 - 新久玉団地前 - 大池田 - 岡東 - ハイヤ通り - 牛深港

各駅停車の普通便も運行されていました。1997年からは一時期、本渡側の始発着地が本渡港まで延伸されていました。

使用車両の変化

運行開始当初は、一般観光タイプの大型標準床トップドア車（スタンダードデッカー）またはハイデッカー車両が使用されていました。しかし、近年における利用者減少や原油価格高騰の影響、そして天草地域医療センター・天草市立河浦病院への乗り入れ開始などにより、2000年代後半頃からは、いすゞの中型バスや日野の小型バスといった一般路線車が普通バスと共通で運用されるようになりました。

乗車券

乗車券は、本渡バスセンターの自動券売機または産交バス牛深営業所の窓口で購入できました。片道・往復乗車券は普通便でも利用可能でした。

SUNQパス（全九州版・北部九州版とも）、天草回遊乗車券が利用できましたが、わくわく1dayパス（熊本県内版）は快速便では利用できませんでした（普通便では利用可能）。

「うしお号」は廃止されましたが、その記憶は今もなお、天草を走るバスの中に息づいていることでしょう。

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