苓北町

熊本県苓北町：天草諸島の歴史と自然が織りなす町

苓北町は、熊本県天草郡に位置する町で、天草諸島の北西部、下島の北西端に位置しています。東西約9.76km、南北約12.3kmと細長く伸びた形状をしており、総面積は67.09km²です。西側には天草灘、北側には千々石灘と、美しい海に囲まれた環境にあります。町名は、天草諸島の古名である「苓州」の北部にあることに由来しています。

地理と自然：富岡半島とハマジンチョウ

苓北町を特徴づけるのは、細長く突き出た富岡半島です。陸繋島として知られ、この半島から伸びる砂嘴である巴崎は、小天橋とも呼ばれ、県指定天然記念物のハマジンチョウが群生する景勝地となっています。海岸線は変化に富み、美しい景観を呈しています。

歴史：天草の中心地として栄えた400年

苓北町は、数百年にわたって天草地方の中心地として重要な役割を担ってきました。1205年には、志岐光弘が志岐六ヶ浦の地頭となり、坂瀬川、志岐、都呂々、富岡を含む天草下島北部一帯を約400年にわたって統治しました。戦国時代末期には全盛期を迎え、キリシタン大名である志岐麟泉はイエズス会の宣教師を招き、布教を許可するなど、独自の政策を展開しました。南蛮貿易も試みられたものの、実現には至りませんでした。

江戸時代には富岡に代官所が置かれ、約270年間天草全土の郡政を治めました。政治、経済、文化の中心地として、大きく発展を遂げました。しかし、1914年と1927年には台風による高潮被害に見舞われ、海岸線付近に甚大な被害が出ました。

1955年、坂瀬川村、志岐村、富岡町、そして翌年には都呂々村が合併し、現在の苓北町が誕生しました。

経済：天草陶石と火力発電

苓北町の経済は、古くから続く天草陶石の生産に支えられています。江戸時代から単味で磁器化する良質な陶石の産地として知られ、現在も富岡港から大量に出荷されています。また、第二次世界大戦前後には天草炭田の一角として炭鉱が点在していましたが、1954年には志岐炭鉱で坑道に海水が流入する事故が発生し、多数の犠牲者を出しました。

1990年代には、九州電力苓北火力発電所が建設され、熊本県内の電力需要の約3分の2を賄う重要な発電所となっています。この発電所の存在が、町の財政基盤を安定させる役割を果たしています。

交通：陸路と海路

苓北町には空港や鉄道駅はありません。最寄りの空港は天草飛行場、最寄りの鉄道駅は三角駅と長崎駅です。町内では産交バスが運行され、天草市中心部とを結んでいます。道路網は国道324号、国道389号、そしていくつかの県道を整備されていますが、高速道路は通っていません。

海路としては、富岡港と長崎県茂木港を結ぶ航路があります。かつては苓北町有フェリーが運行されていましたが、現在は高速船による運航となっています。この航路は離島航路補助事業の対象となっています。

教育と文化：歴史的建造物と教育機関

苓北町には、熊本県立天草拓心高等学校（マリン校舎）、苓北町立苓北中学校、複数の小学校、そして熊本県立苓北養護学校などの教育機関があります。また、富岡城跡や志岐城跡などの歴史的建造物、妙見の滝などの観光スポットも存在し、地域の文化と歴史を伝えています。

まとめ

苓北町は、豊かな自然、歴史、そして現代産業が調和した町です。天草諸島の中でも独特の文化と景観を持ち、今後も独自の道を歩んでいくことでしょう。

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