おゆき (1977年のテレビドラマ)

『おゆき』詳細解説

作品概要

『おゆき』は、1977年上半期に放送されたポーラテレビ小説の第18作目にあたる連続ドラマです。主演には、当時現役大学生だった名取裕子が抜擢され、本作が初主演作となりました。名取裕子は、本作でその存在感を示し、以降、数々のドラマや映画で活躍する人気女優へと成長を遂げました。

あらすじ

舞台は明治43年、土佐の鰹節問屋「南雲屋」。明るく活発な娘、おゆきは、病床の母、さわから、自身の将来のために縁談を進められようとしていました。しかし、兄の松丸は縁談相手に土佐犬をけしかけ、話を壊してしまいます。実は、おゆきはさわの実子ではなく、17年前、巡礼の志津がさわ夫婦に託した子でした。

さわは息を引き取る前に、おゆきに、跡取りの善太郎と結婚して店を継いでほしいと告げます。しかし、善太郎は使用人のお美和と愛し合っていました。周囲は南雲屋の安泰を考え、お美和を店から辞めさせます。そのやり方に憤慨した松丸は善太郎と対立。思い悩んだおゆきは、店を離れ、お遍路に出ることを決意します。松丸も一緒に行くと言い出し、二人は大阪へ。

松丸は大阪で米相場での成功を目指し、米問屋で見習いとして働き始めます。そこで、南雲屋を追われたお美和と再会。おゆきは、松丸に頼み、有り金をはたいてお美和を色街から救い出します。しかし、米屋開業にまつわる詐欺に遭い、意気消沈した松丸はお美和と結ばれます。自分の居場所がないと感じたおゆきは、下宿を離れ、料亭で働き始めます。

松丸は、おゆきを力づくで連れ戻そうとしますが、その際、通りすがりの青年、保科健作が助けに入ります。逆上した松丸は健作を叩きのめし、逮捕されてしまいます。おゆきは、健作に松丸を助けてほしいと懇願。健作はおゆきの願いを聞き入れ、事件は酒の上の喧嘩だったと証言します。この出来事をきっかけに、おゆきは健作に好意を抱くようになります。

その後、おゆきと松丸は東京へ。二人が見つけた長屋の大家は、人形町の寄席「一扇亭」の女将、お吉でした。ある日、おゆきは人力車に轢かれそうになりますが、その車に乗っていたのは、おゆきを捨てた実母の志津でした。志津は、米相場の大物の妻になっていました。

お吉に気に入られ、一扇亭で働くことになったおゆきは、思いがけず保科健作と再会。二人は結婚の約束を交わしますが、健作は母親の策略でドイツ留学へ旅立ってしまいます。結婚に反対する健作の母の策略だったのです。おゆきは、保科家の前で一弦琴を弾き、「二度と人を好きになりません」と誓います。

松丸と志津の死を乗り越え、お吉とその甥の幸造に支えられ、おゆきは健気に生きていくのでした。

出演者

南雲屋の人々

おゆき：名取裕子
松丸：前田吟
善右衛門：原保美
さわ：大路三千緒
善太郎：柴田侊彦
善兵衛：佐藤英夫
つね：高田敏江
源三：早崎文司
美和：幸真喜子

その他

お吉：赤木春恵
幸造：田村高廣
志津：千之赫子
大久保：花柳喜章
保科健作：新木しげる
保科久恵：外崎恵美子
宗十：瀬川新蔵
てつ：三木弘子
定吉：上田忠好
仙太：鈴木正幸
音松：山田貫太郎
三朝：三遊亭遊三
お安：野際陽子
大瀬久美：遥くらら
吉兆：島田正吾

スタッフ

脚本：小山内美江子
音楽：惣領泰則
制作：柳井満
プロデュース：新井定雄
演出：高畠豊、大岡進、竹之下寛次
ナレーター：古今亭志ん朝

主題歌

主題歌は、惣領泰則が作曲したインストゥルメンタル曲で、番組内で使用されることはありませんでしたが、イメージソングとして、さいとう大三が作詞、入江恵真が歌う「想い出がほほえみかけて」というレコードが発売されました。

その他

名取裕子のデビューのきっかけは、三浦友和の相手役募集に応募したことでした。映画『星と嵐』に出演後、本作で初主演を果たしました。
ポーラテレビ小説は、新人女優の登竜門としても知られており、本作以降、藤真利子、樋口可南子、宮崎美子、萩尾みどり、山本みどり、岡江久美子などが、この番組からデビューしました。また、アナウンサー志望だった浜尾朱美も、TBSの入社試験を受けた際にプロデューサーの目に留まり、女優デビューを果たしました。
ドラマのノベライズ本が、TBSブリタニカから発売されました。
当時の「週刊テレビガイド」には、1週間分のストーリーが掲載されていました。

参考資料

「週刊TVガイド」（1977年、東京ニュース通信社）
「テレビジョンドラマ」（1983年創刊号、放送映画出版）

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