お水取り

東大寺二月堂のお水取り：1200年以上続く伝統行事

お水取り（おみずとり）は、奈良県にある東大寺二月堂で毎年3月1日から14日にかけて行われる修二会（しゅにえ）という法会の中で、最も重要な行事の一つです。正式名称は「十一面悔過（じゅういちめんけか）法要」といいます。

お水取りとは

お水取りという名前は、3月12日の深夜に、二月堂の閼加井屋（あかいや）という場所から観音様にお供えする「お香水」を汲み上げる儀式に由来します。この儀式は、単なる水の汲み上げではなく、罪を懺悔し、天下の安寧を祈願するという重要な意味を持っています。

修二会自体は、752年に良弁（ろうべん）の高弟である実忠（じっちゅう）によって始められたと伝えられています。以来、一度も中断されることなく続けられており、2023年で1272回目を迎えました。

修二会の目的

修二会の主な目的は、仏の前で自らの罪過を懺悔すること（悔過）です。期間中、心身を清めた僧侶（練行衆）が、十一面観音の前でひたすら祈りを捧げ、荒行を通じて罪を悔い改めます。同時に、国家の安泰や人々の幸福も祈願します。

古代には、天災や反乱などの国家的な災いは「国家の病気」によるものと考えられていました。そのため、罪を悔い改める十一面悔過は、国家的な宗教行事として重要視され、「不退の行法」として現代まで引き継がれてきたのです。

達陀の行法

お水取り期間中のハイライトは、12日、13日、14日の深夜に行われる達陀（だったん）の行法です。練行衆が火天や水天に扮し、二月堂内の暗闇の中で大きな松明を燃やして行われます。その様子は非常に幻想的で、見る者を圧倒します。

若狭とのつながり

お水取りには、福井県小浜市との深い関わりがあります。「お香水」は、若狭国から10日かけて地下を通って二月堂の若狭井へ届くと伝えられています。そのため、小浜市の若狭神宮寺では、毎年3月2日に若狭井へ水を送る「お水送り」の神事が行われています。

竹送り

籠松明として使われる真竹を二月堂まで届ける行事を竹送りといい、奈良市内や京田辺市、生駒市高山地区などから寄進されています。

お水取りが終わると春が来る

近畿地方では、「お水取りが終わると春が来る」と言われています。厳しい冬を乗り越え、春の訪れを告げるお水取りは、人々に希望と安らぎを与える行事として、大切に受け継がれています。

お水取りの起源に関する研究

お水取りの起源については諸説あります。伊藤義教は、修二会に見られるイラン文化との類似点や、お水取りの地下水路伝説とカナートとの関連などペルシア文化の影響を指摘しています。一方、五来重はペルシア文化伝来説を否定し、若狭とのつながりは後代に作られたものであり、民間の正月行事である「おこなひ」が起源であるという説を唱えました。

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