かもめビーチ号

かもめビーチ号（かもめビーチごう）



かもめビーチ号は、かつて日本の夏期繁忙期に東日本旅客鉄道（JR東日本）によって信越本線および北陸本線で運行されていた臨時快速列車です。主に長野県内から信越国境を越えて、日本海に面した新潟県の西頸城地域にある海水浴場へのアクセス手段として機能しました。

この列車は、夏の学校の長期休暇が始まる時期からお盆休みの少し前までの期間、主に7月下旬から8月上旬にかけて運転されました。普通車のみで構成され、指定席と自由席が連結されていました。運行された年によって区間や運転形態に若干の変更はありましたが、概ね信越本線の小諸駅から直江津駅を経由し、北陸本線の能生駅までを結ぶ昼行列車として1往復が設定されていました。特に利用客が多い特定日には、指定席車両の割合を増やして「海の日かもめビーチ号」という愛称で運転されたこともあります。

運行区間と停車駅



運行区間は時期によって変動しましたが、晩年期にあたる1998年の停車駅は以下の通りでした。これは長野新幹線開業により出発駅が長野駅に短縮された後の例です。


これらの駅に停車し、長野県と日本海側の海水浴場を結んでいました。

使用車両



かもめビーチ号に使用された車両は時代によって変化が見られます。晩年期の主な使用車両は、当時、長野駅と直江津駅を結ぶ特急「信越リレー妙高」にも用いられていた「あさま色」の189系特急形電車でした。それ以前には、国鉄時代から引き継がれた近郊形電車の169系が使用されており、「湘南色」や長野地区独自の「新長野色」といった塗装の車両が活躍した時期もありました。

歴史



日本における海水浴輸送を目的とした列車の歴史は古く、かもめビーチ号もその流れの中で誕生しました。1960年代に入ると観光需要が大きく増大し、夏季には各地で海水浴場へ向かう臨時列車が設定されるようになります。国鉄長野鉄道管理局管内でも、長野県内の住民の海水浴需要に応えるため、信越本線を経由する臨時列車「かもめ」と、大糸線を経由する臨時列車「さざなみ」が企画されました。当初は旧型客車や気動車が使用され、いずれも日本海側の谷浜駅を終着駅としていました。これらの列車は、1975年頃にそれぞれ「かもめビーチ」、「さざなみビーチ」と愛称が変更されました。

その後、松本地域からの需要を担っていた「さざなみビーチ」は1981年頃に一旦運転を終了しますが、数年の休止期間を経て、1985年には篠ノ井線を経由して小諸駅始発の「かもめビーチ」と併結運転を行う形態で復活します。これは往路（下り）は篠ノ井駅で連結し、復路（上り）は長野駅で分割するという、やや変則的な運転方法でした。この併結運転は1992年まで続けられました。

国鉄が分割民営化されJR東日本が発足した1987年には、上田駅から信越本線を経由して新潟県の柏崎駅へ向かう「スカイビーチ号」が新たに設定されました。1989年には、かもめビーチ号が直江津駅で柏崎行きの列車（スカイビーチ号に相当するか）と分割・併結を行う特殊な形態で運行されましたが、翌年からは再び小諸駅始発として単独運転に戻り、1997年までこの形で運行されました。

1997年10月には北陸新幹線の一部区間である長野新幹線が開業し、並行する信越本線の軽井沢駅～篠ノ井駅間が第三セクター鉄道であるしなの鉄道に移管されました。これに伴い、かもめビーチ号も影響を受け、翌1998年からは出発駅が長野駅に短縮されました。この頃は高速道路網も整備が進んでおり、北へ延伸を続けていた上信越自動車道が1999年10月には全線開通するなど、交通環境が大きく変化していく時期でした。このような時代の流れの中で、かもめビーチ号は2000年以降、設定されることがなくなり、その歴史に幕を閉じました。

長年にわたり、長野県から日本海への夏のレジャー客を運び続けたかもめビーチ号は、高速交通網の発達によりその役目を終えましたが、多くの人々の夏の思い出とともに記憶されています。

（注：運行終了年に関する資料は限定的ですが、一般的に2000年以降は運行されなかったとされています。）

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