かわせみ やませみ

JR九州特急「かわせみ やませみ」：肥薩線の歴史と変遷を刻む観光列車

2017年3月4日、JR九州は肥薩線を走る観光列車「かわせみ やませみ」の運行を開始しました。デザイン＆ストーリー列車（D&S列車）の11番目として誕生した本列車は、熊本駅と人吉駅を結び、地域の活性化に貢献しました。

それ以前、熊本駅～人吉駅間の特急列車は2016年3月のダイヤ改正で「くまがわ」が廃止され、一時消滅していました。しかし、「かわせみ やませみ」の運行開始と、快速「いさぶろう・しんぺい」の特急格上げによって、再び特急列車が復活しました。

しかし、2020年7月4日の令和2年7月豪雨により、肥薩線は甚大な被害を受け、熊本駅～人吉駅間は長期運休に陥りました。「かわせみ やませみ」も運行を停止せざるを得なくなりました。

豪雨災害の被害状況を踏まえ、JR九州は肥薩線の復旧に尽力する一方、同年8月8日からは肥薩線応援企画として、鹿児島本線門司港駅～博多駅間で「かわせみ やませみ」と「いさぶろう・しんぺい」の併結運転を開始しました。土休日を中心に1日1往復の運行でしたが、これは2021年2月以降も継続されました。その後、2022年7月2日から8月26日にかけては、「かわせみ やませみ」単独での運転が約2年ぶりに復活。9月19日まで続けられました。

2022年9月23日のダイヤ改正では、運行区間が豊肥本線熊本駅～宮地駅間に変更されました。現在も土休日を中心に1往復運行されています。

運行概況と車両について

「かわせみ やませみ」は、現在、土休日を中心に熊本駅～宮地駅間を1往復運行する臨時列車です。カウンター席やボックス席はインターネット予約に対応しておらず、駅窓口や旅行会社での予約が必要です。

車両はキハ47形2両編成で、水戸岡鋭治氏によるデザインが施されています。1号車「かわせみ」は青を基調とした車体色で、リクライニングシート、カウンター席、ボックス席などを備えています。2号車「やませみ」は緑を基調とし、ソファ席、リクライニングシート、カウンター席に加え、「やませみベンチシート」も設置されています。このベンチシートを利用する場合は、通常の特急料金に210円が加算されます。

車内にはVR装置が設置され、球磨川下りや疑似飛行体験などを提供しています。また、普通形のキハ47の前面カメラで撮影した列車運行映像も視聴可能です。内装には地元産の杉やヒノキ、イグサなどが使用され、自然を感じさせる空間が演出されています。

肥薩線優等列車の歴史：かつての「くまがわ」

「かわせみ やませみ」の運行を理解するためには、肥薩線を走った過去の優等列車の歴史を振り返る必要があります。

特急「くまがわ」は、2004年3月13日の九州新幹線部分開業を機に、急行列車から格上げされました。その歴史は1959年4月1日に門司港駅～人吉駅間を運行する準急列車として始まりました。その後、急行列車に格上げされ、博多駅発着に変更、さらに運行区間や本数の変更を経て、2000年3月11日には6往復運転されました。

2004年3月のダイヤ改正で、熊本駅～人吉駅間の優等列車はすべて特急に格上げされ、「くまがわ」と「九州横断特急」の2系統が運行されました。その後、本数は削減され、2016年3月26日のダイヤ改正で、「くまがわ」は廃止されました。

「くまがわ」で使用されていた車両は、185系気動車で、2両編成が基本でしたが、多客期には3両編成となることもありました。ワンマン運転が基本で、車内販売は「くまがわ1号」のみで行われていました。

肥薩線優等列車の変遷

肥薩線の優等列車は、国鉄時代から数々の変化を遂げてきました。準急「くまがわ」「えびの」「やたけ」「からくに」は1966年に急行に格上げされました。その後、運行区間や本数の変更、列車の併結・分離、特急への格上げ・格下げなどが繰り返されました。これらの変遷は、地域の交通事情の変化や社会情勢を反映しています。

1970年代には、一部列車が湯前線湯前駅まで乗り入れるなど、運行形態も多様化していました。1980年代には、新幹線開業に伴うダイヤ改正により、一部列車が廃止、または路線変更されました。

民営化後も、運行形態や車両の変更が継続されました。2000年代には、「くまがわ」が特急「九州横断特急」に統合されるなど、大きな変化がありました。

2016年のダイヤ改正で「くまがわ」が廃止され、「かわせみ やませみ」がその歴史を受け継ぎ、新たな旅のスタイルを提案しています。

まとめ

「かわせみ やませみ」は、肥薩線の歴史と自然を体現する観光列車です。豪雨災害からの復興を象徴する存在であり、地域の未来を担う役割を担っています。その運行形態や車両、そして肥薩線の歴史を理解することは、地域の文化や歴史を学ぶ上で非常に重要です。

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