くいだおれ

株式会社くいだおれと「くいだおれ太郎」

株式会社くいだおれは、大阪府大阪市に本社を置く企業で、マスコットキャラクター「くいだおれ太郎」のマネジメントを行っています。かつては同名の飲食店と、それを収容するビルを経営していました。

概要

1949年6月、大阪市南区西櫓町（現在の中央区道頓堀1丁目）に、山田六郎氏が創業しました。店名の「くいだおれ」は、「京の着倒れ、江戸の飲み倒れ」という慣用句を基に作られたとされています。ただし、江戸時代後期には「大坂の喰ひだほれ」という言葉も存在しており、上方では「京は着て果、大坂は喰て果、堺は家で果る」という言葉が使われていたようです。

戦後の焼け野原から復興を目指す大阪で、食堂として創業したくいだおれは、家族経営を貫き、支店を持たない方針でした。創業者・山田六郎氏の遺言にも「支店を出すな」「家族で経営せよ」「看板人形を大切にせよ」と記されています。

1952年には、当時珍しかったアメリカ製のテレビ受像機を店内に設置。1959年には、全館空調を完備した「くいだおれビル」を建設しました。このビルは、1階が総合食堂、2階が居酒屋、3階が日本料理店、4階から8階が割烹お座敷という構成で、まさに「食い倒れの町」大阪を体現するような場所でした。2007年には、本家「くいだおれ」の裏手に西洋料理店「ウラ・くいだおれ」をオープンしましたが、本家の閉店に伴い、2008年に閉店しました。

閉店とその後

2008年4月8日、建物の老朽化や周辺環境の変化を理由に、同年7月8日をもって閉店することが発表されました。最終営業日には、著名人を招いて「最後の晩餐」が催され、くいだおれ太郎も「永いことありがとう。おおきに　太郎」という言葉を残しました。女将の「大阪名物くいだおれは日本一幸せな店でございました」という言葉と共に、約59年の歴史に幕を閉じました。

その後、不動産は傍系のくいだおれ不動産が保有していますが、跡地利用は未定です。株式会社くいだおれは、飲食業を廃業後、マスコットキャラクターのマネジメント業に業態を変えています。2009年には、旧劇場の跡地に建てられた「中座くいだおれビル」に、くいだおれ太郎が移設されました。元のくいだおれビルは、現在土産物店として営業しており、くいだおれ太郎のグッズなどを販売しています。

くいだおれ太郎

「くいだおれ太郎」は、店の1階正面に設置されたチンドン屋姿の広告宣伝用人形です。1950年に登場して以来、大阪の観光名物として親しまれています。もともと、飲食店は大人だけが行く場所という認識が強かった時代に、子供連れの家族が外食を楽しむというビジョンを掲げ、子供の興味を引くために製作されました。

文楽人形を意識して作られたこの人形は、太鼓を叩いたり鐘を鳴らしたり、首を振ったり、口をパクパクさせたりします。これらの動作は一種の「宣伝ロボット」として機能しています。以前は、人間が直接文楽人形を操作して呼び込みを行っていたそうです。顔のモデルは喜劇役者の杉狂児と言われています。

1959年のくいだおれビル建設時には、銀行から「店頭の人形を撤去すること」が融資条件として提示されました。しかし、山田氏はどうしても太郎を外したくなかったため、銀行融資なしでビルを建設したそうです。

1985年には、阪神タイガースの優勝に興奮したファンが太郎を担ごうとしましたが、当時の営業部長が体を張って守りました。1989年に昭和天皇が崩御した際には、衣装を白黒に変更。1990年には、別バージョンの「バンザイ人形」（後の「次郎」）が登場し、天皇の即位を祝福しました。1992年には、阪神タイガースの優勝が近づいた際、「わて、泳げまへんねん」という看板を掲げ、浮き輪と水中眼鏡という特別な姿になりました。

「くいだおれ太郎」は、大阪城、通天閣、太陽の塔と並ぶ大阪のシンボルとして認知されています。2008年にくいだおれが閉店した際は、展示が中断されましたが、2009年に「中座くいだおれビル」に復活しました。この復活を祝う式典には、大阪府知事や大阪市長も参加しました。

また、くいだおれ太郎は、アニメ「ルパン三世」の企画で「盗み出される」という演出をされたり、日産自動車のイメージキャラクターや、「ファンタ」のCMにも登場するなど、様々な活動をしています。

製作者

「くいだおれ人形」の作者は、二代目由良亀（藤本雲並）という人物です。彼は、淡路人形浄瑠璃の頭（かしら）の製作者で、文楽関係者に才能を見出され、大阪に出て文楽人形の製作者となりました。谷崎潤一郎の小説『蓼喰ふ虫』にも「由良亀」として登場しています。くいだおれ人形は、由良亀がアルバイトで制作したもので、本業の浄瑠璃の頭（かしら）製作者としても作品を残しています。

名前

「くいだおれ太郎」という名前は、実は1994年まで公式には存在しませんでした。それまでは「くいだおれ人形」と呼ばれていました。1994年に関西国際空港が開港した際、オーストラリア行きの旅客機に「乗客」として搭乗した際、正式に名前が与えられました。同時に、「バンザイ人形」には「くいだおれ次郎」という名前が与えられました。

この企画では、太郎がオーストラリアに到着した様子が現地メディアでも報道されました。また、1995年には、アメリカ・ロサンゼルスに「旅行」し、野球選手の野茂英雄を応援するために球場に現れ、話題となりました。

家族について

くいだおれ太郎には、父親と弟がいます。父親の名前は「おやじ」、弟の名前は「くいだおれ次郎」です。また、「楽太郎」という従兄弟もいます。

父:「おやじ」は、お盆に乗せたビールジョッキを回転させる姿で登場しましたが、苦情が殺到したため、短期間のみの登場となりました。太郎や次郎、楽太郎とは容姿が全く異なります。
弟:「次郎」は、両手を上下に動かす「バンザイ人形」として知られています。国民的な祝い事がある際に登場します。現在は太郎が多忙なため、次郎が店頭に登場することが多くなっています。
従兄弟:「楽太郎」は、「ウラ・くいだおれ」の店内に座っていました。太郎や次郎に似た姿で、ウクレレを持っていますが、稼働はしません。

関連書籍

「ばかたれ、しっかりせ - くいだおれ会長・山田六郎伝」（著：柿木央久、1996年 講談社）
「くいだおれ太郎のつぶやき。」（著：くいだおれ太郎、2008年 マガジンハウス）

関連項目

かに道楽
づぼらや
キダ・タロー
ダークダックス
ウゴウゴルーガ
ドウトン
千日堂

外部リンク

大阪名物くいだおれ
中座くいだおれビル
* 大阪名物くいだおれ　総務部のブログ

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