すずらんの里駅

すずらんの里駅：企業の要請から生まれた中央本線の駅

長野県諏訪郡富士見町富士見にあるJR東日本中央本線「すずらんの里駅」は、その名の通り、のどかな田園風景が広がる場所に位置しています。しかし、この駅の誕生には、意外な経緯がありました。

セイコーエプソンと「すずらんの里」

1985年、セイコーエプソン株式会社は、富士見町にある事業所への従業員の通勤利便性を高めるため、中央本線に新たな駅の設置をJRに要請しました。同社は設置費用約2億円を負担し、駅の建設を推進しました。そして、地元の入笠高原の別名「すずらん高原」にちなんで「すずらんの里駅」と名付けられました。これは当時の国鉄としては特異な事例であり、多くの議論を呼びました。

開業から現在まで

1985年10月31日、すずらんの里駅は国鉄の駅として開業。旅客のみを取り扱う無人駅としてスタートしました。その後、1987年の国鉄分割民営化によりJR東日本の駅となり、2014年には東京近郊区間に編入、2017年にはSuicaの利用が可能になりました。

駅の構造と特徴

すずらんの里駅は、相対式ホーム2面2線の地上駅です。ホームは盛土上にあり、階段でアクセスします。無人駅であるため、自動券売機はありませんが、乗車駅証明書発行機と簡易Suica改札機が設置され、利便性が確保されています。

年間を通して無人駅ですが、諏訪湖祭湖上花火大会（8月15日）や全国新作花火競技大会（9月第1土曜日）開催時には、JR社員による臨時乗車券発売が行われます。また、特急列車の高速通過に対応するため、電車接近表示機が設置され、さらにJR東日本の無人駅では珍しい発車ベルも備え付けられています。駅には待合所と駐車場、トイレも整備されています。

利用状況と周辺環境

すずらんの里駅の1日平均乗車人員は、2007年度で329人、2010年度には348人、2011年度には357人と、年々増加傾向にあります。駅周辺には国道20号が通り、御射山神戸という集落があります。中央自動車道諏訪南ICも近く、交通量は多いです。駅の開業は、セイコーエプソンの富士見・諏訪南両事業所へのアクセスを大きく向上させました。他にもカゴメの工場や富士見パノラマリゾートなどがあり、地域経済に貢献しています。

隣の駅

すずらんの里駅の隣の駅は、上り方面が富士見駅、下り方面が青柳駅です。

まとめ

すずらんの里駅は、企業の積極的な関与によって誕生した、ユニークな歴史を持つ駅です。無人駅でありながらも、利用者の利便性を考慮した設備が整えられており、地域社会に貢献しています。その存在は、企業と地域社会の連携の成功例と言えるでしょう。これからも、地域住民や観光客にとって重要な交通拠点として、その役割を果たしていくことでしょう。

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