ずべ公番長シリーズ

ずべ公番長シリーズ：1970年代を彩った伝説のスケバン 映画

『ずべ公番長シリーズ』は、1970年代初頭に東映が製作した、大信田礼子主演の映画シリーズです。全4作品が制作され、不良少女を意味する俗語「ずべ公」をタイトルに冠し、当時の社会風俗を反映した、アクションとエロチシズムを融合させた作品として知られています。

シリーズの概要

「ずべ公」という言葉は、戦前から使われていたとされる不良少女を指す俗語で、この言葉をタイトルに使用した映像作品としては、1960年に東映が製作した『ずべ公天使』が挙げられます。『ずべ公番長』は、『女性版不良番長』として企画され、シリーズ1作目の『ずべ公番長夢は夜ひらく』は、藤圭子の代表曲「夢は夜ひらく」を主題歌に採用、2作目以降も当時のヒット歌謡をタイトルに用いた『夜の歌謡シリーズ』としての側面も持ち合わせていました。

シリーズを通じて、主人公のずべ公たちが、仁義を重んじ、女の共同体を守るために、暴力団と対決する物語が展開されます。そのスタイルは、同時期の東映任侠路線の影響を強く受けており、アクションシーンの迫力も大きな見どころとなっています。

大信田礼子の魅力

本シリーズは、大信田礼子の出世作としても知られています。大信田が演じる主人公は、1作目と2作目が「影山リカ」、3作目と4作目が「リカ」と名前を変えますが、同一人物として設定されており、物語は連続しています。リカは、少女鑑別所を何度も出入りし、社会に出てはヤクザの抗争に巻き込まれ、復讐のために立ち上がるという、当時の東映映画らしい物語展開が特徴です。

また、大信田の他に、橘ますみと千本ミツ子（集三枝子）がシリーズを通してレギュラー出演。賀川雪絵は、毎回異なる役柄を演じながらも、シリーズを彩る重要な存在として活躍しています。

シリーズの大きな見どころの一つに、大信田をはじめとするずべ公たちのファッションがあります。ビキニ、ミニスカート、ホットパンツなど、当時の流行を取り入れたサイケデリックな衣装は、観客の目を惹きつけました。第3作『ずべ公番長はまぐれ数え唄』のキャッチコピー「ニューファッションにドスひとふり！これが女やくざのおとしまえ」が示すように、ファッションとアクションを融合させた点が、本シリーズの大きな特徴と言えます。

シリーズの変遷

シリーズは、回を重ねるごとにエロ要素が薄れていき、ずべ公たちの男顔負けの活劇へと変化していきました。初期の作品は、過激な描写もあったものの、次第にアクション性が重視されるようになり、女性版アウトロー映画としての地位を確立していきました。

作品リスト

1. ずべ公番長夢は夜ひらく (1970年9月22日公開)
監督: 山口和彦
脚本: 宮下教雄、山口和彦
出演: [大信田礼子]、宮園純子、賀川雪絵

2. ずべ公番長東京流れ者 (1970年12月3日公開)
監督: 山口和彦
脚本: 宮下教雄、山口和彦
出演: [大信田礼子]、橘ますみ、賀川雪絵

3. ずべ公番長はまぐれ数え唄 (1971年3月9日公開)
監督: 山口和彦
脚本: 宮下教雄、山口和彦
出演: [大信田礼子]、賀川雪絵、集三枝子

4. ずべ公番長ざんげの値打もない (1971年4月28日公開)
監督: 山口和彦
脚本: 宮下教雄、山口和彦
出演: [大信田礼子]、賀川雪絵、橘ますみ

制作の背景

本シリーズは、東映が1970年代に本格化した好色路線（東映ポルノ）の一環として企画されました。同時期に東映京都撮影所では、池玲子や杉本美樹主演の「女番長シリーズ」が制作されていましたが、『ずべ公番長』は、東映東京撮影所で製作され、よりファッショナブルな女番長映画として独自路線を歩みました。この背景には、日活で制作された和田アキ子主演の『女番長野良猫ロック』のヒットも影響しています。

大信田礼子が主演に選ばれた背景には、当時のプロデューサーの思惑がありました。大信田自身は、偶然出会った山口和彦監督から、女性版『不良番長』の企画を持ちかけられたと語っています。また、演技については、勝新太郎から指導を受けたとも語っています。

シリーズ終了の理由

シリーズ終了の理由については、東映側が大信田に脱ぐことを要求し続けたものの、大信田がこれを拒否したためとされています。当時、海外からのポルノ映画が大量に輸入され、興行的な成功を収めていたため、東映も脱げる女優の発掘を急いでいました。しかし、大信田は「歌一本に賭ける」として東映を去り、シリーズは終了しました。大信田自身は、最終作の撮影中に衣装がずれたことがきっかけで、シリーズを終える決意をしたと語っています。

評価

本シリーズは、スケバン映画の先駆として、また、大信田礼子の女優人生を語る上で欠かせない作品として、映画史にその名を刻んでいます。山根貞男は「スケバン映画の先駆」と評価し、藤木TDCは「大信田礼子の女優人生は、日本のフィメールアクション映画史そのもの」と評しています。

大信田礼子の魅力については、馬飼野元宏が「陽性のスケバン」と評し、真魚八重子は「天衣無縫さ」を評価しています。また、中野貴雄は「男に頼らず、セクシーでありながら決して性を売り物にしない人物造形」を評価し、磯田勉は「ストレスフリーに育った肉体」と「ラテン系のノリ」を評価するなど、多くの批評家から高い評価を得ています。

映像ソフト

ビデオソフトも発売されていたとされていますが、1990年代には視聴が困難となっていたようです。2008年には、東映ビデオから全4作品がDVD化され、再び視聴が可能となりました。

『ずべ公番長シリーズ』は、単なるアクション映画としてだけでなく、1970年代の社会風俗や女性の生き方を映し出した作品としても、その価値が再評価されています。

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