山根貞男

山根貞男の生涯と業績

山根貞男（やまね さだお、1939年10月15日 - 2023年2月20日）は、日本の文化に大きな影響を与えた映画評論家、漫画評論家、翻訳家として知られています。彼は元々、菊池浅次郎というペンネームを使用しており、この名前は映画『明治侠客伝 三代目襲名』のキャラクター名からインスパイアを受けたものです。

経歴

大阪府で生まれた山根は、大阪外国語大学のフランス語科を卒業後、大学の演劇部に情熱を注ぎました。25歳の時に『日本読書新聞』の編集者となり、1967年には日本初の漫画評論誌『漫画主義』の創刊に関与しました。この時、彼は菊池浅次郎名義で、漫画史に残るつげ義春の作品「沼」を扱った記事を発表し、彼の業績を世に知らしめることになりました。

映画評論の道

山根は1969年、映画批評誌『シネマ69』を創刊し、そこから映画評論に本格的に取り組み始めます。この頃には、蓮實重彦や上野昂志といった後の著名な評論家たちとの交流が生まれ、彼らに映画批評の執筆を促しました。そして、山根自身も鈴木清順の特集号を通して、映画批評の執筆に至りました。

日本映画への視点

彼は1970年に『遊侠一匹 加藤泰の世界』を編著し、以降は日本映画を中心に論じる評論家として有名になりました。山根の評論は、娯楽映画という新たな視点から日本映画を再評価するものであり、山田宏一や蓮實との共著も多数ありました。彼は多くの映画関係者へのインタビューも手掛け、特にマキノ雅弘の自伝『映画渡世』は、彼と山田による聞き書きとして知られています。

映画祭の企画

さらに、彼は国内外の映画祭での特集企画やフィルムの発掘にも力を入れました。特に1986年からは『キネマ旬報』にて日本映画に関する時評を執筆し続け、鈴木清順や深作欣二などを高く評価しました。その一方で、黒澤明や市川崑などの作品に対しては厳しい批評を行うこともありました。

フィルムコレクターとしての活動

1988年には小津安二郎の失われた作品「突貫小僧」が発見されて以来、全国のフィルムコレクターに取材を行うようになりました。また、1995年にはロシアの映画保存機関を調査するなど、精力的に活動を展開しました。

教育と著作

2001年からは東海大学で特任教授として映画史と映画論を教え、多くの学生を育成しました。特筆すべきは、2021年に発刊された『日本映画作品大事典』で、これは彼が22年をかけて編纂した膨大な作品です。

山根貞男は2023年に胃癌のため亡くなるまで、精力的に活動を続け、日本映画と漫画の研究や評論に多大な功績を残しました。彼の著作や業績は、今後も日本の文化において重要な位置を占めることでしょう。

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