ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-

ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-

2018年8月24日に公開されたアニメーション映画『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』は、スタジオポノックによる3つの短編作品からなるアンソロジー作品です。スタジオポノックのプロジェクト「ポノック短編劇場」の第一弾として制作され、『メアリと魔女の花』に続く劇場公開作品となりました。同スタジオ初の短編映画作品集という点でも注目を集めました。

3つの物語

この作品は、それぞれ異なる監督、異なるテーマ、異なる作風を持つ3つの短編から構成されています。

1. カニーニとカニーノ

監督は米林宏昌氏。上映時間は19分。主人公は赤いマントを羽織り、ハサミ型の槍を持つ擬人化されたサワガニの兄弟、カニーニとカニーノです。他の生物はデフォルメを抑えたリアルな描写が特徴的です。

物語は、大嵐の日に父を失ったカニ兄弟が、父を探して危険な旅に出る冒険譚です。兄弟の絆、自然の厳しさ、そして家族の愛が丁寧に描かれています。流されてしまった父との再会、そして成長した兄弟の旅立ち。彼らの生き様は、観る者の心に深く刻まれるでしょう。木村文乃さんと鈴木梨央さんがそれぞれカニーニとカニーノの声を担当しています。

2. サムライエッグ

監督は百瀬義行氏。上映時間は17分。舞台は東京・府中市。主人公は、重度の卵アレルギーを持つ小学生のシュンです。アレルギー治療のため、少量ずつ卵を摂取する日々を送るシュンですが、その苦痛から治療を避けがちでした。ある日、誤って卵入りアイスクリームを食べてしまい、激しい症状に襲われます。しかし、必死に助けを求め、一命を取り留めます。この経験を通して、シュンはアレルギーと向き合い、克服しようと決意します。

この作品は、子供たちの抱える困難と成長、そして家族の支えを描いた心温まる物語です。シュンの葛藤と決意、家族の愛情が繊細に表現されています。篠原湊大さん、尾野真千子さん、坂口健太郎さんが、シュンとその両親、そして医師役の声を担当しています。

3. 透明人間

監督は山下明彦氏。上映時間は18分。舞台は港町。主人公は、透明人間として生きる青年です。会社員として働きながらも、誰も彼を認識しません。常に重い消化器を携行し、浮いてしまわないように生活しています。しかし、盲目の老人と盲導犬だけは、彼の存在を感知します。ある日、青年は事故から乳母車と赤ん坊を救います。赤ん坊は、青年の透明な顔を見て泣き止み、笑顔になります。

この作品は、社会から孤立した透明人間の孤独と、それでもなお、他者への優しさを失わない心の強さを描いています。オダギリジョーさん、田中泯さんが、透明人間と盲目の老人の声を担当しています。

各短編の評価と反響

『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』は、2019年のアヌシー国際アニメーション映画祭とザグレブ国際アニメーション映画祭に出品され、高い評価を得ました。特に『透明人間』は、多くの観客の共感を呼びました。また、2019年には金曜ロードSHOW!で視聴者投票によって放送作品が決定され、『透明人間』が放映されました。

まとめ

『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』は、3つの異なる物語を通して、普遍的なテーマを描き出した、見応えのあるアニメーション映画です。それぞれの短編は、緻密な映像表現と個性豊かなキャラクター、そして感動的なストーリーで、観る者の心を深く揺さぶります。それぞれの監督の個性と才能が融合した、忘れられない作品と言えるでしょう。

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