山下明彦

アニメーター山下明彦：ジブリ作品の中核を担った才能と多様な活動

山下明彦氏は、1966年2月6日、岡山県倉敷市生まれのアニメーター、キャラクターデザイナー、アニメ演出家、監督です。少年時代は富野由悠季監督作品、特に湖川友謙氏の作風に影響を受け、アニメーターを志すようになりました。『トムとジェリー』や『ルパン三世 カリオストロの城|ルパン三世_カリオストロの城』といった作品から得たインスピレーションも、彼のアニメーションへの情熱を大きく掻き立てたと言われています。

岡山県立倉敷南高等学校卒業後、上京し、アニメーターとしてのキャリアをビーボォーでスタートさせます。その後、スタジオぱっくを経てアトリエ戯雅に参加。同社の解散後はプロジェクトチーム・ムー（後のフェニックス・エンタテインメント）に参加し、『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』の作画監督、キャラクターデザイン、絵コンテなどを担当しました。約10年に及ぶこのプロジェクトへの取り組みは、20代の全てを費やした重要な経験となり、彼のクリエイティブな才能を大きく開花させました。しかし、作品完成後、モチベーションの低下に悩んだ時期もありましたが、『幻想水滸外伝』のオープニング制作を通して、平田智浩氏や松本憲生氏との出会いにより、アニメーションへの情熱を再び燃やし始めます。

フェニックス・エンタテインメントの制作事業撤退後は、トライアングルスタッフに参加し、『NieA_7』の舞台設計を担当。その後、『ストレンジドーン』のキャラクターデザインなどを経て、スタジオジブリに参加することになります。『千と千尋の神隠し』では、原画としてクライマックスシーンなどを担当し、宮崎駿監督の高い評価を受けました。続く『ハウルの動く城』では、筆頭作画監督に抜擢されるなど、スタジオジブリ作品の中核を担う存在へと成長していきます。

『ゲド戦記』では作画演出として、絵コンテの整理やレイアウトチェックなどを担当。また、『崖の上のポニョ』では、参加スタッフの中で最も多くの原画を担当し、特にリサとカーのカーチェイスシーンなどが彼の担当でした。制作の後半では作画監督補佐も務めています。さらに、三鷹の森ジブリ美術館上映の短編映画『ちゅうずもう』では初監督を務め、その才能の多様性を示しました。『風立ちぬ』では最多カット数の原画を担当するなど、多くのジブリ作品に貢献し、安藤雅司氏からは「（2000年代以降の）スタジオジブリ作品を支えてきた代表的なアニメーター」と評されています。

スタジオジブリの制作部門解体後はフリーランスとなり、妻である下笠美穂氏と共に、『怪盗ジョーカー』などの作品に参加。有限会社トラッシュスタジオのCM制作にも携わり、西日本の生協グリーンコープの30周年記念CMシリーズではキャラクターデザインを担当するなど、活動の幅を広げています。

2018年には、スタジオポノック制作の映画『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』の一編である『透明人間』を監督し、第22回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞を受賞しました。2023年公開の『君たちはどう生きるか』では、作画監督の本田雄氏を補佐する役割を担い、多くの原画修正を請け負い、作品クレジットには筆頭原画として記載されています。宮崎駿監督からは「近頃珍しく健全なアニメーター」と評されていることからも、彼の高い技術と人柄が伺えます。

山下氏と同時期にアトリエ戯雅に所属していた本田雄氏は、ビーボォー出身である山下氏の作画スタイルについて、「リアル系ではないのに、リアルな画も描けるし、線が流暢なんです」と述べており、その高い技術と表現力に強い印象を受けていたことを語っています。

数多くのテレビアニメ、劇場アニメ、OVA、ゲーム、CMなどに携わり、多岐にわたる才能を発揮してきた山下明彦氏。彼の作品は、日本のアニメーション史に大きな足跡を残していると言えるでしょう。彼の今後の活躍にも、大きな期待が寄せられています。

もう一度検索