つくもがみ貸します

つくもがみ貸します：江戸の古道具屋に宿る、付喪神たちの物語

畠中恵氏による人気小説シリーズ『つくもがみシリーズ』の第一作『つくもがみ貸します』は、2007年に角川書店より刊行され、その後文庫化、さらには児童向け文庫への展開も果たしたロングセラー作品です。2017年10月時点で累計発行部数は60万部を突破しており、その人気は広く読者に支持されています。2013年には続編『つくもがみ、遊ぼうよ』が刊行され、シリーズ化。さらに『小説 野性時代』にて『つくもがみ笑います』が連載されるなど、精力的に作品世界が展開されています。

物語の舞台は、江戸時代の深川にある古道具屋兼貸し道具屋「出雲屋」。そこには、100年の時を経て付喪神となった様々な古道具たちがいます。噂好きで個性豊かな付喪神たちは、貸し出された先々で様々な情報を集め、出雲屋に持ち帰ります。

主人公の清次は21歳、出雲屋の主人で、付喪神たちの声を聞くことができます。優しく人情に厚い性格から町の人々に愛されていますが、お紅を支えたいという気持ちから空回りすることも。一方、お紅は清次より1歳年上の義理の従姉で、明るく可愛らしい性格をしています。4年前の火事で実家と父を亡くし、出雲屋に引き取られました。

そして、お紅の思い人である佐太郎。唐物屋「飯田屋」の若旦那で、優れた容姿と人柄で知られています。しかし、お紅への求婚を断念し、ある事情から行方をくらましています。お紅は佐太郎の消息と、彼が紛失した香炉「蘇芳」の行方を捜し続けています。

清次とお紅は、付喪神たちが持ち帰る騒動を解決しながら、物語を進めていきます。その過程で、佐太郎の意外な真実が明らかになっていくのです。

物語を彩る付喪神たちも魅力的です。蝙蝠の根付の野鉄、満月の掛軸の月夜見、雁首煙管の五位、豪華な姫人形のお姫、櫛のうさぎ、そして佐久間家の印であるネズミの根付の利休鼠など、個性豊かな付喪神たちが、それぞれの事情や想いを秘めています。

彼らは単なる道具ではありません。長い時を経て、魂を宿した存在です。彼らの言葉を通して、江戸時代の深川の暮らしや人々の生活、そして人間の心の機微が繊細に描かれています。

『つくもがみ貸します』は、心温まる物語でありながら、江戸時代の風情や人情、そして付喪神という幻想的な要素が絶妙に融合した、魅力的な作品です。読み終えた後には、古道具や江戸時代への関心が深まり、付喪神たちの存在を想像せずにはいられなくなるでしょう。

主な登場人物

清次: 出雲屋の主人。付喪神の声が聞こえる。お紅に淡い恋心を抱いている。
お紅: 清次の義理の従姉。明るく優しい性格。佐太郎の消息を捜している。
佐太郎: お紅の思い人。唐物屋「飯田屋」の若旦那。行方をくらましている。
様々な付喪神たち: 個性豊かで、物語を盛り上げる重要な存在。

シリーズ展開とメディアミックス

『つくもがみ貸します』は、小説のみならず、漫画化、そして2018年にはNHK総合にてテレビアニメ化もされました。アニメーション制作はテレコム・アニメーションフィルム。主題歌はMIYAVI vs シシド・カフカ、倉木麻衣が担当するなど、豪華な布陣で作品の世界観が表現されています。さらに、Webラジオの配信も行われ、作品の世界観を多角的に楽しめる展開となっています。

この作品は、単なる物語としてだけでなく、江戸時代の文化や歴史、そして人間の心の機微に触れることができる、奥深い作品です。もし、心温まるファンタジー小説を探しているなら、『つくもがみ貸します』はきっとあなたの心を掴むでしょう。多くの読者から愛されている理由を、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

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