ひとかけらの純情

ひとかけらの純情

「ひとかけらの純情」（ひとかけらのじゅんじょう）は、日本の歌手、南沙織（みなみさおり）によって1973年12月5日に発表された楽曲です。CBS・ソニーから発売された、彼女にとって通算10枚目のシングルとなります。

楽曲構成と制作背景

この楽曲の制作には、作詞に有馬三恵子（ありまみえこ）、作曲および編曲に筒美京平（つつみきょうへい）が携わりました。本作の音楽的な特徴として挙げられるのが、印象的なコーラスの活用です。曲は冒頭からコーラスで始まり、その後南沙織のヴォーカルが入ります。楽曲の終盤では、ヴォーカルとコーラスが掛け合いながら進行し、独特の盛り上がりを見せて終わります。この構成は当時の歌謡曲としては斬新なものであり、楽曲に深みと抒情性を与えています。

タイトルに込められた意味

楽曲のタイトル「ひとかけらの純情」は、当時のCBS・ソニーで数々の南沙織作品を手掛けたプロデューサー、酒井政利（さかいまさとし）によって名付けられました。酒井氏は後に、このタイトルには「喪失」と「誇り」という、一見相反する二つの感情が込められていると語っています。失われたものへの哀惜だけでなく、心に残る誇りや尊厳といった意味合いも含むという解釈は、楽曲に多層的な奥行きを与えています。

テレビドラマでの使用事例

発表から長い年月が経過しても、「ひとかけらの純情」は様々な形で人々の記憶に留まっています。その一例として、2001年にフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『カバチタレ!』での使用が挙げられます。このドラマの最終回において、常盤貴子と妻夫木聡が演じる登場人物が喫茶店で会話する場面のBGMとして、本楽曲が流されました。この喫茶店のシーンでは、ドラマ全編を通して1970年代の楽曲が選曲されており、「ひとかけらの純情」もまた、その時代を彩る代表曲としてフィーチャーされました。

シングルに収録された楽曲

本シングルには、A面楽曲として「ひとかけらの純情」（演奏時間: 3分5秒）が、そしてB面楽曲として「透き通る夕暮れ」（演奏時間: 2分49秒）が収録されています。両楽曲ともに作詞は有馬三恵子、作曲・編曲は筒美京平という同じクリエイターチームによって手掛けられました。「透き通る夕暮れ」もまた、A面曲の世界観と通じる、叙情的な魅力を持った楽曲です。

アルバム等への収録状況

「ひとかけらの純情」は、南沙織のキャリアを代表する一曲として、その人気と評価の高さから、オリジナルアルバムに加えて数多くのベスト・アルバムや企画盤に繰り返し収録されています。発売当時のオリジナルアルバム『ひとかけらの純情』に初収録されたのを皮切りに、『南沙織ヒット全曲集』や『THE BEST / 南沙織』といった定番のベスト盤、さらには『Cynthia Memories』、『CYNTHIA ANTHOLOGY』、『GOLDEN☆BEST 南沙織 筒美京平を歌う』など、様々な編集盤にその姿を見出すことができます。オリジナルバージョンだけでなく、ライブ音源や異なるミックスが施されたバージョンが収録されることもあり、この楽曲がいかに長く、多様な形でファンに届けられ続けているかを示しています。

B面曲の「透き通る夕暮れ」も、A面曲ほどではないものの、一部のベスト盤や企画盤に収録され、改めて聴かれる機会を得ています。

主なカヴァーアーティスト

「ひとかけらの純情」は、発表後に他のアーティストによってもカヴァーされています。特に知られているカヴァーバージョンとしては、人気ロックバンドのTHE ALFEE|THE_ALFEEによるものや、歌手の森昌子によるものがあります。これらのカヴァーは、原曲の持つ普遍的なメロディーや世界観を、それぞれのアーティスト独自の解釈で表現しており、楽曲が世代やジャンルを超えて愛されていることを証明しています。

関連する情報

本楽曲が発表された1970年代前半は、日本のアイドル歌謡が全盛期を迎えていた時代です。南沙織は、小柳ルミ子、天地真理と共に「新三人娘」として時代の中心的存在でした。「ひとかけらの純情」は、そうした時代背景の中で生まれ、彼女の代表曲の一つとして、また1973年から1974年にかけての日本の音楽シーンを語る上で重要な一曲となりました。

「ひとかけらの純情」は、その独特な音楽性、深いタイトルに込められた意味、そして時代を超えて人々に親しまれ続ける魅力によって、南沙織の豊かなディスコグラフィーの中でも、ひときわ輝きを放つ名曲と言えるでしょう。

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