ふるさと村 (岡山県)

「ふるさと村」とは、岡山県が独自の取り組みとして進めている地区単位の保存・整備事業、あるいはこの事業によって指定された地区全体の名称です。昭和49年（1974年）に開始されたこの事業は、まだ国による広範囲な景観保存施策が十分に整っていない時期に、県が主体的に歴史的な集落や町並みの保存を目指した点で画期的な試みと言えます。昭和50年（1975年）に国の「伝統的建造物群保存地区」制度が設けられるよりも早く着手されたことは、特筆に値します。

この事業では、歴史的な背景や特徴を持ついくつかの地区が「ふるさと村」として指定され、その地区内の保存建造物や史跡を含む総称としても用いられています。これまでに指定された地区は以下の通りです。

八塔寺ふるさと村（備前市吉永町加賀美）
昭和49年（1974年）4月に指定されました。かつて山岳仏教の一大拠点であった八塔寺の山麓に広がる高台の集落で、静かで歴史を感じさせる景観が特徴です。

大高下ふるさと村（津山市阿波大高下）
八塔寺と同じく昭和49年（1974年）4月指定。茅葺き屋根の民家や重厚な土蔵、水車小屋などが良好な状態で残されており、往時の農村の暮らしぶりを偲ばせる風景が広がっています。

越畑ふるさと村（苫田郡鏡野町越畑）
こちらも昭和49年（1974年）4月指定。かつてこの地で行われていたタタラ製鉄の史跡が点在するほか、茅葺き民家や水車小屋など、山間の集落の伝統的な景観が保たれています。

石火矢町ふるさと村（高梁市石火矢町）
昭和49年（1974年）12月に指定されました。備中松山城の城下町に位置する武家屋敷が集中するエリアです。江戸時代の城下町の区画がそのまま残っており、当時の武家社会の面影を伝える貴重な建造物群が見られます。

吹屋ふるさと村（高梁市成羽町）
石火矢町と同じく昭和49年（1974年）12月指定。江戸時代後期から明治時代にかけて、銅鉱山とそこで産出される硫化鉄鉱を原料とした弁柄（べんがら）生産で大いに栄えた鉱山町の歴史的な町並みが残されています。この地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも重複して選定されており、その価値が高く評価されています。

真鍋島ふるさと村（笠岡市）
昭和53年（1978年）5月に指定されました。瀬戸内海に浮かぶ小さな島、真鍋島にある地区です。古くから海上交通の要衝として栄え、港町の面影を残す古い漁村の素朴な景観が魅力的です。

* 円城ふるさと村（加賀郡吉備中央町円城）
昭和55年（1980年）3月指定。かつて円城寺の門前町として栄えた集落の景観が保存されています。

これらの「ふるさと村」は、岡山県内に残る多様な歴史的、文化的景観を保護し、未来へ継承していくための重要な取り組みの成果と言えます。各地区が持つ独自の歴史や暮らしの痕跡を、訪れる人々に伝えています。

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