フウ

フウ（楓）

フウ（学名: Liquidambar formosana）は、マンサク科フウ属の落葉高木で、公園樹や街路樹として広く利用されています。別名として、サンカクバフウ（三角葉楓）、タイワンフウ（台湾楓）、イガカエデ（伊賀楓）、カモカエデ（賀茂楓）などがあります。古くはオカツラ（男桂）とも呼ばれていました。

名称の由来

種小名の formosana は「台湾の」という意味です。属名の Liquidambar は、その樹皮から採れる香りの良い樹脂を指す「液体の琥珀」に由来します。中国ではこの樹脂を採取することから、「楓香樹」という名で呼ばれています。また、中国名の別名である「楓」が、和名のフウの語源となっています。

日本では「楓」の字を「カエデ」と読むのが一般的ですが、本来の「楓」はこのフウを指し、カエデを表す漢字は「槭」です。

分布と生育地

原産地は台湾と中国南東部です。日本へは江戸時代中期に渡来し、当初は珍しい木として江戸城や日光に植えられました。現在では日本全国に分布し、特に関東地方以南で多く見られます。

特徴

樹木

フウは落葉広葉樹の高木で、幹はまっすぐに伸び、高さは20～25メートルに達します。原産地では40～60メートルにもなるものがあります。樹皮は灰色から灰褐色で、縦に浅い筋が入り、老木になると網目状に裂けます。

葉

葉は掌状に3つに裂けるものが一般的ですが、5つに裂けたり、複雑な形になることもあります。葉の縁には細かい鋸歯があります。カエデに似た葉の形をしていますが、カエデが枝に対生するのに対し、フウは互生します。秋には紅葉し、赤色、橙色、黄色と美しく色づきます。葉柄には托葉がありますが、枝には托葉痕は残りません。

花と果実

雌雄同株で、花は雌雄ともに球形をしており、花被はありません。春に新葉が出ると同時に花を咲かせます。初夏には枝先にイガのような若い果実がつき、秋の紅葉時期には光沢のある褐色で、細かい棘と隙間がある球状の集合果が成熟します。この果実は蒴果で、冬でも枯れ葉とともに残ることがあります。

冬芽

冬芽は長さ5～10ミリメートルの卵形から長卵形で、11～18枚の芽鱗に包まれています。芽鱗には薄茶色の毛があり、枝先につく頂芽は側芽よりもやや太めです。葉痕は半円形から三角形で、維管束痕は3つあります。

トウカエデとの比較

フウはトウカエデに似ていますが、樹皮や茎の形で区別できます。

利用

フウは秋の紅葉が美しいため人気があり、庭木、街路樹、公園樹として利用されています。中国では、特有の香りを持つ樹脂を「楓香脂」として薬用に使用しています。

近縁種

近縁種としてモミジバフウが知られており、フウをサンカクバフウやタイワンフウと呼ぶこともあります。

フウ属

フウ属（Liquidambar）は、フウ科に属する属の一つで、「琥珀色の液」を意味し、この植物から採れる樹脂が香料や薬用に使われていたことに由来します。フウ属には、中国、台湾、小アジア、北アメリカに4種が存在します。

Liquidambar acalycina
Liquidambar formosana (フウ)
Liquidambar orientalis
Liquidambar styraciflua (モミジバフウ)

脚注

注釈

特になし

出典

亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年、50-51頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年、217頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年、176-178頁。ISBN 4-12-101238-0。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。ISBN 978-4-8299-0187-8。
茂木透 写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男 監修、山と溪谷社、2000年、30-31頁。ISBN 4-635-07004-2。

関連項目

木の一覧

外部リンク

Liquidambar formosana - National Center for Biotechnology Information (英語)
Liquidambar formosana - Encyclopedia of Life (英語)
* フウ - 植物雑学事典 (岡山理科大学)

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