みなぞう

江の島水族館のアイドル、ミナミゾウアザラシ「みなぞう」

「みなぞう」（推定1993年 - 2005年10月4日）は、神奈川県藤沢市の江の島水族館（現・新江ノ島水族館）で飼育されていたオスのミナミゾウアザラシです。その愛くるしい姿とコミカルな仕草で、多くの人々を魅了し、水族館のシンボルとして愛されました。

生い立ち

1994年後半、ウルグアイのロボ島で推定1歳の幼獣として捕獲され、1995年3月11日から江の島水族館の「海の動物園」で展示が開始されました。「みなぞう」という名前は、約1500通の公募の中から選ばれました。

1998年頃には体重が1000キログラムを超え、その巨体からは想像もつかない愛嬌のある顔立ちで人気を集めました。特に、バケツを前肢で抱える姿や、「あっかんべー」「海苔巻き」「えびぞり」といったユニークなポーズ、前足で餌のバケツを抱える姿は、多くの来場者を笑顔にしました。彼の写真は案内板やグッズにも使用され、まさに水族館のアイドル的存在でした。

当時、日本国内でミナミゾウアザラシを飼育していたのは江の島水族館と二見シーパラダイス（現・伊勢夫婦岩ふれあい水族館シーパラダイス）の2施設のみでした。1999年8月に二見シーパラダイスで飼育されていたオスの「元気」が死亡したため、みなぞうは国内唯一のオスのミナミゾウアザラシとなりました。

引っ越し

2002年3月に「海の動物園」が閉鎖されると、みなぞうはマリンランドに移されました。そこでは、手狭なスナメリクリスタルプール（スナメリが亡くなった後はカマイルカの飼育に使用されていた）を簡易的に改装したプールで飼育されました。マリンランドが2002年9月に営業を終了した後も、約1年間は同施設で飼育されました。

新江ノ島水族館の建設が進む中、2003年9月3日には、みなぞうを檻ごと大型クレーンで吊り上げ、日本通運の特殊大型トレーラーに積載して、約150メートル離れた新館まで時速10km以下の超低速で搬送する作業が行われました。この引っ越しの様子は、テレビの情報番組や新聞報道で大きく取り上げられました。マリンランド閉館から新江ノ島水族館開館までの間、公式サイトでは時折みなぞうの様子が掲載され、ファンを安心させました。

新江ノ島水族館開業後

新江ノ島水族館では、みなぞうのために大型のプールが用意されました。2004年4月の開館後は、2頭のゴマフアザラシと共に悠々と暮らすみなぞうの姿を間近で見ることができました。また、当時人気を博していた格闘家ボブ・サップに似ているという声も上がり、話題を呼びました。

2005年2月のバレンタインデーには、国内唯一のメスのミナミゾウアザラシである二見シーパラダイスの丸子・夢海子母娘から、「あっかんべー」のポーズ写真が贈られました。翌月のホワイトデーには、みなぞうからバケツを抱えるポーズ写真が贈られ、微笑ましい交流が行われました。

最期

2005年10月3日の夕方から体調を崩し、翌10月4日の朝には餌を食べなくなりました。給餌プログラムを中止し、同日の閉館時間間際に診断のためプールの水を排水し始めたところ、17時15分に急逝しました。推定11歳（人間で言えば30歳代に相当）、体長約4.5m、体重約2175kgでした。

遺体は近隣の日本大学生物資源科学部獣医学科に運ばれ、解剖の結果、死因は肺気腫による呼吸不全と判明しました。その後、同学部キャンパス内の日本大学生物資源科学部博物館で骨格標本として展示されています。

現在、海獣の中でも特にカリフォルニアアシカ、ラッコ、ゾウアザラシ類は、ワシントン条約などにより捕獲・輸入が厳しく制限されており、みなぞうの後継となるミナミゾウアザラシの搬入は難しい状況です。

メモリアルイベント

みなぞうの死は、2005年10月5日以降、マスコミで広く報道され、献花台が設けられました。地元の子供たちから花束や折り鶴、手紙が寄せられ、7日にはお別れ会が行われました。

同年11月16日から30日にかけては「追悼展示会」が開催され、旧マリンランドでのお披露目から2005年10月頃までの写真、地元の子供たちが描いたみなぞうの絵、公式グッズのデザイナーや飼育員によるイラストや追悼メッセージなどが展示されました。

関連商品

新江ノ島水族館では、「みなぞう」をモチーフにしたグッズが多数発売されました。彼の死後、これらのグッズは追悼の意味合いも込められ、多くのファンに愛されています。

ぼくみなぞう

2004年11月には、みなぞうの一日を写真と文章で綴った絵本仕立ての単行本「ぼくみなぞう A day of the southern elephant seal」が日経BP社から出版されました。

みんなのみなぞう

2005年8月1日には、新江ノ島水族館売店でDVDビデオソフト「みんなのみなぞう」が先行発売されました。このDVDには、オリジナルキャラクター「みなぞう」が歌うクレイアニメや、KONISHIKIプロデュースの楽曲などが収録されています。

江の島水族館で飼育された他のミナミゾウアザラシ

江の島水族館では、みなぞう以前にも、1964年4月20日からオスの「大吉」とメスの「お宮」というミナミゾウアザラシを飼育していました。特に大吉は、飼育下のミナミゾウアザラシとしては最大級の個体であり、飼育係が梯子を使って餌を与える様子は有名でした。大吉は1977年12月12日に死亡し、数年後にお宮も後を追うように亡くなりました。

みなぞうは、江の島水族館の歴史の中で、ひときわ輝きを放ったミナミゾウアザラシでした。彼の愛らしい姿は、多くの人々の心に深く刻まれ、今もなお語り継がれています。

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