海獣

海獣：水中の哺乳類たち

海獣とは、海に生息する哺乳類の総称です。クジラ、イルカ、アザラシ、アシカ、ジュゴン、マナティー、ラッコなどが含まれ、水族館や海洋生物学、漁業などの分野で広く用いられる用語です。しかし、分類学的なグループを指すものではなく、水生への適応という共通点を持つ哺乳類をまとめて呼ぶ、便宜的な分類と言えます。

海獣の分類：多様な仲間たち

水族館などでは、クジラ類、海牛類、鰭脚類、ラッコを主要な海獣として扱います。ホッキョクグマも、一部時間帯を海で過ごすことから、海獣に含める場合もあります。さらに、カワウソの一部や、絶滅したデスモスチルスなども、海獣の仲間として挙げられることがあります。一方、カワイルカやバイカルアザラシのように、淡水域に生息する種は、厳密には海獣に含まれませんが、明確に区別されないことも多いです。

海獣は、海生への適応度合いで、大きく3つのグループに分けられます。

1. 海洋常在種: クジラ類と海牛類は、一生を海洋で過ごし、陸上では生きられない種です。
2. 海洋適住種: 鰭脚類とラッコは、一生の大部分を海洋で過ごしますが、繁殖や休息のために陸に上がります。
3. 海洋好遊種: ホッキョクグマは、主に陸上や氷上で生活しますが、餌を求めたり、外敵から逃れたりする際に、積極的に海で泳ぎます。

海への適応：陸生哺乳類からの進化

哺乳類は、元々は水生でしたが、一度完全に陸生に適応した後、一部の種が再び海へと進出しました。そのため、海獣は陸生哺乳類から二次的に水生生活に適応した種であり、完全な水生生物とは異なる特徴を持っています。

海獣に見られる共通した適応としては、以下の点が挙げられます。

肺呼吸: すべての海獣は肺呼吸を行い、定期的に水面に上がって呼吸する必要があります。
鰭状肢: 四肢は、水中での推進力となる鰭に変化する傾向があります。クジラ類や海牛類では後肢が退化している一方、ラッコやホッキョクグマは四肢の形を保っています。鰭脚類では四肢全てが鰭状となり、陸上での移動は困難になっています。
皮下脂肪: 断熱のために厚い皮下脂肪を持ち、体毛は少ない傾向にあります。ラッコは小型であるため皮下脂肪は薄く、代わりに密な毛皮が断熱機能を担います。
耳介の退化: 海水中での水圧の変化に対応するために、耳介は退化傾向にあります。
* 流線型体型: 水中での抵抗を減らすために、流線型の体型をしています。

海獣の分類：系統と進化

海獣は、系統的には多様なグループから進化した平行進化の例です。現生の海獣は、海牛目、鯨偶蹄目（鯨類）、食肉目（鰭脚類、ラッコ）の3つの目に分類されます。絶滅したデスモスチルス目を含めれば、4目となります。ラッコは、河川性のカワウソから進化したと考えられています。

鯨類の進化

鯨類は、偶蹄類から進化し、水中生活に高度に適応したグループです。ムカシクジラ類から始まり、ヒゲクジラ類とハクジラ類へと分化しました。

海牛類の進化

海牛類は、始新世後期に海に進出したグループで、浅瀬の海草を食べて生活しています。

束柱目の進化

束柱目は、比較的遅く出現したグループで、独特の歯を持つことで知られています。

海獣の展示

水族館では、様々な海獣が飼育・展示されています。かつては、江の島水族館に「江の島海獣動物園」があり、オットセイなどが展示されていました。

海獣は、多様な種類と進化の歴史を持つ魅力的な動物群です。彼らの水中生活への適応は、生物進化の驚異を私たちに示してくれます。

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