ゆめのかよいじ

ゆめのかよいじ

大野安之氏による漫画作品『ゆめのかよいじ』は、少年画報社が発行していた雑誌「ヤングキング」（月刊）に、1987年1月号から4月号および1988年1月号から4月号にかけて連載されました。単行本は少年画報社より全一巻として刊行され、その後2001年には角川書店から内容を大幅に加筆・修正した復刊版が出版されています。作品は、旧版と復刊版とでその趣が大きく異なる点が特徴です。

作品世界とテーマ

物語の主たる舞台となるのは、静かに佇む廃校の木造校舎です。作者は、この古びた学び舎から感じられる独特のノスタルジックな雰囲気を巧みに描写しています。作品の根底には日本の風土に根ざしたテーマや、古くから伝わる伝説や伝承が織り交ぜられており、叙情的かつ幻想的な世界観を構築しています。特に旧版では、主人公である宮沢真理と彼女の姪にあたるりさの関係性が描かれ、物語の継承性が示唆される場面も見られました（Vol.8「電脳」）。

収録エピソード（1988年少年画報社版）

少年画報社から刊行された単行本には、以下のエピソードが収録されています。

Vol.1　音楽室
Vol.2　空蝉（うつせみ）
Vol.3　半蔀（はじとみ）
Vol.4　葉隠（葉隠れ）
Intermission
Vol.5　月映（つくばえ）
Vol.6　3月の声
Vol.7　再見
Vol.8　電脳（Epilogue）

なお、「Intermission」は、雑誌連載時の「Vol.4 住江（すみのえ）」を編集・加筆・削除し、ページ数を削減して構成されています。

単行本と復刊版の違い

1988年に刊行された少年画報社版に対し、2001年に角川書店より出版された復刊版は、単なる再版にとどまらない大きな変更が加えられています。復刊版では、全ページにわたり書き直しや加筆・訂正が行われ、特に最終章にあたるVol.8「電脳（Epilogue）」が削除され、代わりに伝奇的な色彩の濃い全く新しいエピソードが挿入されました。この改変により、作品が持つイメージは大幅に変化し、当初SF的な要素を含んでいた作品は、現代を舞台にした伝奇漫画としての側面を強く打ち出したものへと変貌しています。この復刊版は、後に電子書籍としても再版されています。

書誌情報

少年画報社 ヤングキングコミックス

発行：少年画報社
初版発行：昭和63年10月15日
ISBN：4-7859-1086-0 C0079

角川書店 復刊版

発行：角川書店
発行年月：2001年9月
ISBN：4-04-853369-X

実写映画化

『ゆめのかよいじ』は、2013年に実写映画化され、同年12月14日より公開されました。監督・脚本は五藤利弘が務め、主演は石橋杏奈が宮沢真理役を演じました。ロケは主に新潟県長岡市の栃尾地域で行われ、公開に先駆け2013年11月には新潟県内で先行上映も実施されています。

主なキャスト

宮沢真理：石橋杏奈
岡部梨絵：竹富聖花
中島たかお：白石隼也
他：浅野かや、上田結、岡田さつき、山田幸伸、丸一仙翁、喜多道枝、サーモン鮭山、安藤匡史、大桃美代子（友情出演）

主なスタッフ

原作：大野安之
監督・脚本：五藤利弘
脚本協力：菅野友恵
音楽：石塚徹
主題歌：笹川美和「プリズム」

製作は「ゆめのかよいじ」製作委員会、製作協力はボイスアンドハート、配給も同製作委員会が担当しました。

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