アイソスタシー

アイソスタシー（地殻均衡）とは

アイソスタシー（isostasy）は、地球の地殻が、その下にある重く流動性のある上部マントル（アセノスフェア）に浮かんでいる状態、およびその均衡を指す概念です。地殻は、その荷重と浮力のバランスによって安定しており、この状態は地殻均衡とも呼ばれます。

この概念は、19世紀中頃にヒマラヤ山脈における鉛直線偏差を説明するために、ジョージ・ビドル・エアリーとジョン・ヘンリー・プラットによって提唱されました。その後、クラレンス・エドワード・ダットンによって「アイソスタシー」と名付けられました。

アイソスタシーのメカニズム

地球の表層は、硬く流動性の低いリソスフェアと、その下に位置する比較的流動性の高いアセノスフェアに分けられます。リソスフェアは、地殻とマントル最上部の硬い部分（リッド）から構成されています。一方、アセノスフェアは固体でありながら、部分的に溶融しており、長期的には液体のような流動性を示します。

アイソスタシーは、私たちが普段目にする山や海底などの地形形成に重要な役割を果たしています。地殻の厚さは、その土地の標高を決定する主要な要素です。リッドはアセノスフェアよりも密度が高いため、リッド単独ではアセノスフェアに沈んでしまいますが、その上に密度の小さい地殻が接着することで浮力が生まれます。この浮力は物体の体積が大きいほど強くなるため、地殻が厚いほど大きな浮力を得て、標高が高くなります。

地殻の厚さと標高の関係

アイソスタシーの概念に基づくと、地殻の厚さとその土地の標高には一般的に比例関係があります。例えば、巨大な岩石の塊は高い山となり、逆に薄い岩盤は海底となります。この関係は、地球の表面の多様な地形を理解する上で非常に重要です。

アイソスタシーが成り立たない場合

地球表面の大部分ではアイソスタシーが成立していますが、例外も存在します。例えば、収束型境界のように大きな水平圧力が地殻に働いている場所や、かつて氷床に覆われていた場所で氷が消失し、アイソスタシーが変化している途上などが挙げられます。スカンジナビア半島では、過去に厚さ2,000メートルにも及ぶ氷床に覆われていましたが、氷が融解した後も、年間数ミリメートルの速度で隆起が続いています。

その他の関連事項

アイソスタシーに関連する用語として、以下のようなものがあります。

地殻、マントル: 地球を構成する主要な層。
リソスフェア - アセノスフェア - メソスフェア: 地球内部の構造。
プレートテクトニクス: 地殻変動の理論。
曲動（曲隆、曲降）: 地殻の隆起や沈降。
ヘイフォード楕円体: 地球の形状を表すモデル。
スカンジナビア半島、ボスニア湾、ハドソン湾: 氷床の消失後に隆起が続いている地域。

これらの地域は、最終氷期に数千メートルの厚さの氷床に覆われていましたが、気候温暖化により氷が融解し、氷の荷重がなくなったことで、アイソスタシーを回復しようとして、現在も隆起を続けています。

参考情報

* アイソスタシーの話 - 杉村新・掘清彦

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