アイルランド・カトリック同盟

アイルランド・カトリック同盟（キルケニー同盟）とは

アイルランド・カトリック同盟（Confederate Ireland）、またはキルケニー同盟（Confederation of Kilkenny）は、1641年から1649年にかけてアイルランドで自治を行ったカトリック勢力です。この同盟は、清教徒革命（三王国戦争）によってスコットランドとイングランドが混乱状態に陥った時期に、カトリック信仰の承認を求めて武力蜂起を起こしました。しかし、イングランド内戦が終わると、スコットランド国民盟約軍や遠征軍として派遣されたオリバー・クロムウェルによって鎮圧されました。一方で、カトリック同盟は1922年のアイルランド自由国成立まで、アイルランド人によって自治が行われた唯一の期間でもありました。

蜂起の発端

主教戦争などによってイングランドの支配力が弱まると、1641年10月23日にアルスターで農民蜂起が発生しました。アイルランド人の指導者であるフェリム・オニールとローリー・オモアが決起し、プロテスタントのイングランド人入植者を多数殺害しました（アイルランド反乱・アイルランド同盟戦争）。当初、カトリックのイングランド人はこの蜂起に批判的でしたが、チャールズ1世がカトリックを敵視したため、やむなく同盟に合流しました。同盟の勢力は圧倒的で、アイルランドの大部分を支配下に置きました。

同盟の運営

カトリック同盟は、成立が宣言されるとすぐに憲法を制定し、議会を開きました。議会はアイルランドの地主と聖職者で構成されました。彼らは「神のため、王のため」に立ち上がったと主張し、あくまで国王との和解を目指していました。しかし一方で、スペインやローマから来た聖職者がカトリック同盟内で主導権を握り、国王との徹底抗戦を主張しました。一般的に、オールド・イングリッシュ（カトリックのイングランド人）は国王と近く、ゲール人や聖職者は強硬な姿勢を取りました。

国王との和平交渉

カトリック同盟は国王との和平を望み、両者は交渉のテーブルに着きました。しかし、互いの主張は平行線をたどりました。これは、同盟側が以下の要求を提示したにも関わらず、国王側が受け入れなかったことが原因です。

カトリック教会の財産権を保証すること
カトリック信徒への刑罰を廃止すること

チャールズ1世がこれらの要求を受け入れられなかったのは、国王軍内部でもチャールズ1世の親カトリック政策への批判が強まっていたからです。それどころか、国王軍全権代理オーモンド侯ジェームズ・バトラーは、アイルランド国教会に教会財産を返還することを要求していました。これにより、同盟内の聖職者は激しく反発し、交渉は一時停滞しました。

スコットランド・イングランドの侵攻

カトリック勢力がアイルランドを支配したことは、スコットランドとイングランドの警戒を招きました。1646年、スコットランド・イングランド連合軍が侵攻しましたが、オーウェン・ロー・オニールがベンバーブの戦いで同盟を勝利に導きました。これが一つの要因となり、国王軍との和平交渉が前進し始めましたが、条約が締結されたのは1649年になってからでした。

クロムウェルの遠征と虐殺

イングランド内戦で勝利した議会派は、王党派よりもカトリックを敵視していました。これは、1641年のアルスター蜂起の報道が誇張され、イングランド人の敵愾心を煽ったこと、そしてイングランド共和国で有力だった独立派など諸セクトが信仰面で国教会よりも急進的であったことなどが理由として挙げられます。カトリック同盟に対するニューモデル軍の敵意は非常に強く、1649年から始まったクロムウェルの遠征では、多くの流血が繰り返されました。特にゴールウェイ包囲戦はアイルランド人の記憶に深く残り、長きにわたってイングランドへの敵意を募らせました。IRAに代表されるようなアイルランド問題は、この時期に端を発したと言われています。

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