アウリス

アウリス（Αὐλίς）

アウリスは、古代ギリシア、中央部のボイオティア地方東部に位置した重要な港町です。エウボイア島との間にあるエウリポン海峡に面しており、地理的に重要な位置を占めていました。近隣にはバテュス・リメン港やヒュリアといった他の集落があり、主要都市カルキスからは約4.8キロメートルの距離に位置していたと、古代ローマの歴史家リウィウスは記録しています。

アウリスは独立した都市国家としては発展せず、その歴史の大半において他都市の支配下にありました。紀元前378年まではテーバイの一部であり、その後はタナグラの領域に属しました。

歴史と神話における重要性

古代ギリシアおよびローマ時代の多くの文献において、アウリスは特にトロイアへの大規模な遠征に臨むギリシア諸国の連合艦隊が集結した地として名高く語られています。この地は古くから岩がちな地形として知られ、ホメロスの叙事詩『イリアス』では「岩がちなアウリス」（Αὐλὶς πετρήεσσα）と称され、地理学者ストラボンも「岩の多い場所」（πετρῶδες χωρίον）と言及しています。地名の起源については、旅行家パウサニアスがオギュゴスの娘アウリスに由来するという伝承を伝えています。

ホメロスの『イリアス』には、トロイア遠征の出航前にアウリスで起きた神秘的な出来事が記されています。プラタナスの木陰で犠牲を捧げていたギリシアの将軍たちの目の前で、祭壇の下から一匹の大きな蛇が現れ、木をよじ登って9羽のスズメ（母鳥と雛）を食らい尽くした後に石と化しました。予言者カルカスはこれを神々が示した前兆として捉え、ギリシア軍が9年間戦った後に10年目でトロイアに勝利するであろうと予言しました。

さらに後代に発展した伝説では、ギリシア艦隊の出航が遅延し、アウリスに足止めされたのは、女神アルテミスの神意によるものと語られています。これは、総司令官であるミュケーナイ王アガメムノンが、アルテミスに捧げられた神聖な森で鹿を殺し、さらに自分をアルテミスよりも優れた狩人であると傲慢にも誇ったためだとされます。アルテミスはこれに怒り、風を止めることで艦隊の出航を妨害しました。艦隊が再び順風を得て出航するためには、アガメムノンが自身の長女であるイピゲネイアをアルテミスへの生贄として捧げる必要があったと伝えられています。

アウリスの伝承によると、イピゲネイアが犠牲にされようとした際に順風が吹いた出来事がきっかけとなり、武将たちは彼らが所有するあらゆる種類の獣、雄雌問わずアルテミスに捧げました。それ以来、アウリスではどのような種類の獣でも生贄として適していると見なされる慣習が生まれたと伝わります。しかし、地理学者ストラボンは、アウリスの港の収容能力が船50隻程度と限られていたことから、トロイア遠征のような大規模な艦隊は、おそらく近隣のより大きな港に集結したであろうと推測しています。

アルテミス信仰と考古学的発見

アウリスの地には、ミュケーナイ時代から既に広範囲にわたって人々が定住していました。歴史時代に入ると、アウリスはアルテミス信仰の中心地として重要な役割を担うようになります。特に、アルテミス・アウリディアの聖域は、古典期からローマ時代にかけて長期にわたり繁栄を続けました。紀元前5世紀に建てられたアルテミス神殿の下層から幾何学時代（紀元前10世紀から8世紀）の建築物が見つかっていることは、この地でのアルテミス信仰が極めて古くから継続していたことを裏付けています。ヘレニズム時代には神殿に前室（プロナオス）が増築され、さらに南側には複雑な構造を持つ工房や宿泊施設が建設されました。ローマ帝政期にも神殿は修復を受けています。聖域から発見された多数の奉納品は、アウリスにおけるアルテミス信仰がどれほど盛んだったかを示しています。

旅行家パウサニアスがアウリスを訪れた頃には、人口はわずかに減少し、住民は主に陶器製造を生業としていたと記されています。しかし、アルテミス神殿自体はまだ建っており、そこには白い大理石製の女神像や、ホメロスがかつて言及したものと伝えられるプラタナスの古木の生きている部分が大切に保存されていました。

後世の歴史的出来事

紀元前396年には、スパルタ王アゲシラオス2世が、かつてアガメムノンがトロイアへ出発した故事に倣い、アウリスから小アジアへの遠征を開始しようとしました。しかし、出航前夜にテーバイが介入し、アゲシラオス2世をボイオティア地方から撤退させました。この出来事は、アゲシラオス2世がテーバイに対して抱くことになる深い憎悪の直接的な原因と見なされており、その後の約25年間にわたり、スパルタとテーバイの関係、そしてギリシア世界の政治状況に大きな影響を与えることになります。この対立は、最終的にテーバイのエパメイノンダスがレウクトラの戦いでスパルタに決定的な勝利を収めるまで続きました。

現在と発掘調査

今日、古代のアウリスがあった場所はアヴリダという名称で知られており、行政区分としてはボイオティア県ではなく、海峡を隔てたエヴィア県に属しています。古代の遺跡は、現在の町アヴリダの北側、よりハルキスに近い位置に確認されています。

この地の考古学的な発掘調査は、1928年に初めて実施された後、1954年にはイオアンニス・トレプシアディスによって、そして1956年から1961年にかけては考古学協会の支援のもと体系的に行われました。これらの調査で発見された貴重な出土品は、現在ティーヴァ考古学博物館に収蔵・展示されています。

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