アウルクチ (西平王)

アウルクチの生涯と家族

アウルクチ（モンゴル語: Оруч Uruγči、中国語: 奥魯赤、生没年不詳）は、モンゴル帝国の第5代皇帝クビライ・カアンの庶子であり、重要な皇族の一員でした。彼に関する記録は、主に『元史』と『集史』が中心です。ペルシア語では「اوغروقچى(ūghrūqchī)」、漢文では「奥魯赤(àolŭchì)」と表記されています。

アウルクチは、クビライの側室であるドルベン部出身のドルベジン・ハトゥンから生まれました。彼の同母兄弟には雲南王フゲチがいます。兄たちはそれぞれ燕王、安西王、北平王、雲南王に封ぜられて王国を築いた後、アウルクチも至元6年（1269年）に西平王に任命されました。『集史』には、クビライがアウルクチにチベット地方を委ねたという記述もありました。これにより、アウルクチはチベット東部に西平王国を築くこととなりました。

アウルクチの領地は、チンキムら嫡出の王国に比べて規模が小さかったものの、彼は安西王マンガラの下に置かれていたと考えられています。至元9年（1272年）には、クビライから四川のガインドゥ（現在の西昌市）を征服するよう命じられ、軍を率いて出陣しました。この頃に、クビライからの米の支給も受けています。

1273年には、アウルクチはガインドゥを攻略し、現地の酋長らを捕らえることに成功しました。続く1275年には、チベットのクンガ・サンポによる反乱が発生しましたが、アウルクチはマンガラや他の将軍と共にモンゴル兵を率いてこの反乱を鎮圧しました。この成功により、彼の軍事的能力は評価されましたが、その後は彼の軍事行動に関する記録はほとんど残っていません。

アウルクチは、至元16年（1279年）から至元30年（1293年）にかけてクビライからいくつかの授与を受けたことが知られています。1294年には、クビライの崩御に際して息子たちと共に上都クリルタイに出席し、次代のカアン選出に関与しました。元貞元年（1295年）には、チュベイの率いる軍を指導するよう命じられましたが、情報は限られています。彼は大徳10年（1306年）以降、史料に登場しなくなるため、その頃に亡くなったと推測されています。

子孫

アウルクチの家族については、『元史』と『集史』の両方で彼の二人の息子が言及されています。

テムル・ブカ

アウルクチの長男は、『元史』で「鉄木児不花(tiĕmùér bùhuā)」、『集史』では「تیمور بوقا(tīmūr būqā)」と記されています。この名前は、テムル・ブカ(Temür Buqa)を指しており、アウルクチ・ウルスの当主の座を受け継いでいきました。

イジル・ブカ

次男については、『元史』が「八的麻的加(bādemádejiā)」、『集史』が「ایجىل بوقا(yījīl būqā)」と異なる名称を使用しています。『集史』での「イジル・ブカ」が本名とされる可能性が高いですが、『元史』の方はチベット語に由来する別名であるかもしれません。

アウルクチの子孫たちも、モンゴル帝国において重要な役割を果たし続けました。彼の家族は、後の時代にも影響を及ぼす存在となり、その歴史的な足跡は今も色濃く残っています。

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