アカデミア・フィラルモニカ・ディ・ボローニャ

イタリア北部の歴史的な都市、ボローニャに位置するアカデミア・フィラルモニカは、数世紀にわたる豊かな伝統を持つ音楽機関です。正式名称をイタリア語でアッカデミア・フィラルモニカ・ディ・ボローニャと称します。

その起源は古く、遡ること1666年、ヴィンツェンツォ・マリア・カッラーティによって、音楽家たちの交流と研鑽の場として設立されました。創設当初から音楽界の重要な拠点となり、1721年にはすでに300名を超える会員を擁する規模に発展していました。

このアカデミアは、創設初期から多くの著名な音楽家を迎え入れています。創設メンバーの一人であるジョヴァンニ・パオロ・コロンナをはじめ、ジャコモ・アントニオ・ペルティ、アルカンジェロ・コレッリといったバロック期の巨匠たち、カストラート歌手として名を馳せたファリネッリ、そしてアンドレ＝エルネスト＝モデスト・グレトリ、マクシム・ベレゾフスキー、ヨゼフ・ミスリヴェチェクといった作曲家たちが名を連ねていました。

特に注目すべきは、天才音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが、1770年にこのアカデミアへの入会を認められたことです。これは若きモーツァルトにとって、ヨーロッパの音楽界での地位を確立する上で重要な出来事の一つとなりました。

19世紀から20世紀にかけても、アカデミア・フィラルモニカは世界的な音楽家たちを会員に迎える伝統を継承しました。オペラ界の巨匠ジョアキーノ・ロッシーニやジュゼッペ・ヴェルディ、ジャコモ・プッチーニ、楽劇で時代を画したリヒャルト・ワーグナー、フランス音楽を代表するジュール・マスネやカミーユ・サン＝サーンスなどが会員でした。さらに、ヨハネス・ブラームス、フランツ・リスト、アントン・ルビンシテイン、フェルッチョ・ブゾーニ、オットリーノ・レスピーギなど、様々な分野で活躍した音楽家たちがこのアカデミアとの繋がりを持っていました。

アカデミアは教育機関としての機能も発展させてきました。1804年には、アカデミー附属の音楽学校が設立され、後進の育成に力を入れています。また、18世紀の著名な会員であり、高名な音楽理論家でもあったジョヴァンニ・マルティーニ師の没後、その貴重な蔵書を基盤として図書館が開設されました。この図書館は音楽学研究にとって重要な資源となっており、1959年には音楽博物館も付設され、音楽関連の資料や楽器などを展示・収蔵しています。

現在、アカデミア・フィラルモニカ・ディ・ボローニャは、往年の栄光を受け継ぎつつ、現代の音楽文化振興の担い手として活動しています。多様なコンサートシリーズ、学術的な講演会、企画展示会などを通じて、広く一般市民に音楽の魅力を伝え、研究者や音楽家たちの交流の場を提供し続けています。

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