アカヒレタビラ

アカヒレタビラ（赤鰭田平）について

アカヒレタビラ（学名: Acheilognathus tabira erythropterus）は、コイ目コイ科タナゴ亜科に分類される淡水魚の一種です。この亜種の学名にある「erythro」は「赤い」、「pterus」は「鰭」を意味し、その名の通り、特に繁殖期のオスは鮮やかな赤色の鰭を持つことが特徴です。

形態

アカヒレタビラは、全長約10cm程度に成長します。タナゴ類の中では比較的体高が高く、体側に沿って走る側線は完全で、その鱗数は33から38枚です。背鰭は3本の不分岐軟条と8から10本の分岐軟条、臀鰭は3本の不分岐軟条と7から10本の分岐軟条で構成されています。

繁殖期のオスは、背中側の青緑色がより鮮やかになり、鰓蓋は青紫色に染まります。背鰭と臀鰭は赤色を帯び、特に最盛期には臀鰭の縁が白色になり、腹鰭と尾鰭の付け根にも赤色が発色します。これらの特徴は、近縁のキタノアカヒレタビラやミナミアカヒレタビラと区別する際の重要なポイントとなります。

類似の亜種との比較

アカヒレタビラは、キタノアカヒレタビラ、ミナミアカヒレタビラとよく似ていますが、いくつかの点で異なります。アカヒレタビラは流水性への適応度が高く、閉鎖的な溜池では繁殖が難しいとされます。また、卵の形が鶏卵形であることや、稚魚の背鰭に黒斑が見られない点もミナミアカヒレタビラとの違いです。

生態

アカヒレタビラは、遺伝的に東北地方太平洋集水域と関東地方の2系統に分かれています。食性は雑食で、小動物や付着藻類などを食べます。主に湖沼や流れのある河川、用水路などに生息し、水草の近くのような物陰を好みます。完全な止水域は好まず、閉鎖的な溜池では再生産ができません。繁殖期は4月から6月で、最盛期は5月です。産卵はマツカサガイやカワシンジュガイなどの流水性の二枚貝に行われます。霞ヶ浦ではイシガイを利用することが知られています。

分布と現状

アカヒレタビラは、関東地方と宮城県、岩手県にかけて不連続に分布しています。かつては群馬県や東京都にも生息していましたが、現在は絶滅しています。近年、千葉県で確認される個体は移入の可能性が高いとされています。神奈川県での過去の記録はありますが、在来個体群かどうかは疑わしいとされています。

関東地方では、茨城県霞ヶ浦水系と栃木県の一部水系以外にはまとまった生息地が残っていません。霞ヶ浦では、外来種による捕食や競合、環境変化により、個体数が激減しています。宮城県においても、護岸工事や外来種の影響で生息数が減少しています。各県のレッドリストでは、岩手県で評価なし、宮城県で絶滅危惧Ⅰ類、茨城県で絶滅危惧Ⅱ類、栃木県と千葉県で絶滅危惧Ⅰ類に指定されており、絶滅の危機に瀕していることが示されています。青森県の一部水域にも生息が確認されていますが、これは国内外来種であるとされています。

まとめ

アカヒレタビラは、美しい鰭を持つタナゴの一種ですが、生息環境の悪化や外来種の影響により、その数を大きく減らしています。保護に向けた更なる取り組みが求められています。

脚注

参考文献
赤井裕, 秋山信彦, 上野輝彌, 葛島一美, 鈴木信洋, 増田修, 藪本美孝 (2009). タナゴ大全. エムピージェー.
佐土哲也, 松沢陽士 (2011). タナゴハンドブック. 文一総合出版.

関連項目
タビラ
魚の一覧
コイ科

外部リンク
* FishBase

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