アギス2世

アギス2世：ペロポネソス戦争を彩ったスパルタ王

アギス2世は、紀元前5世紀のスパルタを代表する人物の一人です。エウリュポン朝の王として、ペロポネソス戦争においてスパルタ軍を率い、その軍事手腕を発揮しました。しかし、彼の生涯は軍事的な成功だけでなく、政治的な判断ミスや、王位継承を巡る複雑な問題など、様々な出来事に彩られています。

ペロポネソス戦争における活躍

アギス2世は、先王アルキダモス2世の長子として生まれ、共同統治者パウサニアスと共にスパルタを治めました。ペロポネソス戦争においては、アテナイを相手に幾度も軍事行動を起こしました。

紀元前426年の夏、アギス2世はアッティカ侵攻を目指し、ペロポネソス軍を率いてコリントス地峡まで進軍しましたが、地震により計画は頓挫します。翌年には再びアッティカへ侵攻を試みましたが、ピュロスの戦いで敗北を喫し、撤退せざるを得ませんでした。

ニキアスの和約で戦争が一時的に終結した後も、スパルタとアテナイの間には緊張が続きました。アギス2世は、アルゴスの攻撃を受けた同盟国エピダウロスを支援するため、アルゴスへ侵攻。圧倒的な優勢に立っていたにもかかわらず、講和交渉に応じ、休戦条約を締結します。この決断は、彼を大きな非難の的としました。

しかし、アギス2世の軍事力は依然として高く評価されていました。テゲアがアルゴスの反スパルタ同盟に参加しようとしたため、アギス2世はスパルタ軍を率いてテゲアへと進軍。その後、マンティネイアの戦いでアルゴス・アテナイ連合軍を破るという大勝利を収めます。この戦いは、トゥキュディデスによって「ギリシアで最も大規模な、そして最も強勢な国々による戦い」と評されています。

マンティネイアの勝利後も、アギス2世はアルゴスとの戦いを続け、アテナイのデケレアに砦を築くなど、アテナイへの継続的な圧力をかけました。アテナイのシケリア遠征の失敗を好機と捉え、アテナイへの侵攻を続け、講和交渉にも臨みました。しかし、アテナイの寡頭政権である400人会との交渉は難航し、アギス2世はアテナイを落とすには至りませんでした。

ペロポネソス戦争後と最期

ペロポネソス戦争終結後も、アギス2世はスパルタ軍を率いてエリスへの遠征を行いました。しかし、遠征中に病に倒れ、スパルタへ戻る途中で亡くなりました。彼の死は、スパルタに深い悲しみをもたらしました。

アギス2世の死後、彼の後継者問題が勃発しました。息子のレオテュキデスは、アギスの妻ティマイアとアルキビアデスの子であるとの疑惑が浮上し、王位を継承できませんでした。最終的に、アギス2世の異母弟であるアゲシラオスが次のスパルタ王となりました。

アギス2世の評価

アギス2世は、優れた軍事力を持つ一方で、政治的な判断においては必ずしも成功したとは言えません。マンティネイアの戦いの勝利は彼の功績として高く評価されていますが、講和交渉での失策や、王位継承問題への対応など、彼の政治的な判断には疑問が残ります。しかし、ペロポネソス戦争においてスパルタを率いた重要な人物であったことは間違いありません。彼の生涯は、軍事力と政治力、そして運命の複雑な絡み合いを示す歴史的な事例と言えるでしょう。

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