アクチニウム

アクチニウムとは

アクチニウム（英: actinium）は、原子番号89の放射性元素であり、周期表上でアクチノイド系列に位置しています。元素記号は Ac です。この元素の名前は、ギリシャ語で「放射線」を意味する「aktis」に由来しています。

特徴

アクチニウムはアクチノイド系列の最初の元素であり、非常に特異な電子配置を持っています。アクチニウムの原子は、5f 軌道には電子が存在せず、6d軌道には1個、7s軌道には2個の電子が入っています。このため、アクチニウムは銀白色を呈し、結晶構造は立方晶系を持っています。

また、アクチニウムは強力な放射線を発生させ、特にアルファ線はラジウムよりも150倍も強い放射能を示します。さらに、湿った空気中では酸化被膜を形成する特性もあり、比重は10.07、融点は1050 °C、沸点は3200 °Cと高い数値を示します。化合物中での安定な原子価は +3であり、その化学的性質はランタンに似ています。アクチニウムの電子配置 Ac3+ は、5f0に相当し、イオン半径が大きいため、その酸化物や水酸化物はランタンよりも強い塩基性を示します。

危険性と注意点

アクチニウムはその強い放射能から、取り扱いには十分な注意が必要です。特に実験や研究に使用する際には、グローブボックス内での操作が求められます。研究においては、ラットを用いた実験から、アクチニウムが骨や肝臓に蓄積されることが確認されています。

用途

アクチニウムは、いくつかの興味深い用途に利用されています。特に、アクチニウム227の半減期（21.77年）を活用した地球の水循環に関するモデル化が試みられています。また、アクチニウムの酸化物は中性子発生源として効率的に機能します。

医療においては、アクチニウム225が放射線治療に利用される可能性が注目されています。特に、大阪大学ではアクチニウム225を用いた難治性膵臓がんの治療研究が進行中です。

同位体

アクチニウムには複数の同位体が存在します。中でもアクチニウム227は反応過程で生成され、最も長い半減期（21.7年）を持っています。アクチニウム228は、トリウム系列の過程で生成され、特にトリウム鉱石中に微量含まれています。半減期が短いアクチニウム228は、6.13時間です。

アクチニウム系列は、ウラン235のα崩壊から始まる一連の反応からなり、アクチニウム227に至ります。その後、さらなる崩壊が続いていくことが知られています。

歴史

アクチニウムは、1899年にフランスの化学者アンドレ＝ルイ・ドビエルヌによって初めて発見されました。その際、彼はピッチブレンドからウランを分離した残留物中にこの元素を見つけました。1899年の発見は非常に珍しく、ピッチブレンド1トン中にわずか0.15 mgのアクチニウム227が含まれていることがわかりました。後に別の研究者、ギーゼルも独立してアクチニウムを発見しました。最近の動きとして、2024年には日本原子力研究開発機構が、アクチニウム225の生産を高速増殖炉「常陽」の用途に追加する申請を行っています。

以上のように、アクチニウムはその特異な性質と様々な応用により、現代科学において重要な元素となっています。

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