アクリル酸2-ヒドロキシエチル

アクリル酸2-ヒドロキシエチル：性質、用途、安全性

アクリル酸2-ヒドロキシエチル（HEAまたはBHEA）は、化学式C5H8O3で表される有機化合物です。アクリル酸エステルの一種であり、様々な工業製品の製造に用いられる重要な化学物質です。その高い反応性から、多様な用途を持ちますが、同時に毒性も有しており、取り扱いには細心の注意が必要です。

用途

HEAは、その高い反応性と多様な特性を活かし、様々な用途に使用されています。主な用途としては、以下のものが挙げられます。

塗料: 熱硬化性塗料の原料として使用され、塗膜の強度や耐久性を向上させる効果があります。
接着剤: 接着剤の成分として、高い接着力を発揮します。
繊維処理剤: 繊維の加工処理剤として、繊維の柔軟性や耐久性を向上させる効果があります。
樹脂改質剤: 他の樹脂との共重合により、樹脂の特性を改良する改質剤として使用されます。
紫外線硬化樹脂: 紫外線硬化樹脂の反応性希釈剤として使用され、硬化速度や物性を調整します。
潤滑油添加剤: 潤滑油の添加剤として、潤滑性能を向上させる効果があります。

市販のHEA製品には、重合を抑制するための安定剤（例：メキノール）が添加されているのが一般的です。2004年の日本国内における需要量は58,700トン、輸出量は706トンと報告されています。

安全性

HEAは毒性を持つ物質であり、取り扱いには注意が必要です。日本の消防法では危険物第4類第3石油類（水溶性）に、毒物及び劇物取締法では毒物に指定されています。

急性毒性: ラットへの経口投与による半数致死量（LD50）は548mg/kg、ラットへのミスト吸入によるLC50は1.87～18.52 mg/L/4Hと報告されています。GHS区分では4、もしくは区分外に分類されます。ウサギへの経皮投与によるLD50は154mg/kgであり、GHS区分2（毒劇法上の毒物と同等）に該当します。また、眼への刺激性が非常に強く、結膜炎、角膜混濁、壊死を引き起こす可能性があり、GHS区分1（毒劇法上の劇物と同等）に相当します。

代謝: HEAは、他のアクリル酸エステルと同様に、体内でカルボキシルエステラーゼによってアクリル酸とエチレングリコールに加水分解されると考えられています。その後、二酸化炭素として呼気から排出されたり、グルタチオンと抱合してメルカプツール酸として尿中に排泄されたりする経路を経て代謝されます。経口または腹腔内投与されたHEAの2.5mg/kgでは、呼気から35%、尿から45%が排泄されました。しかし、50mg/kgでは、呼気から42%、尿から35%と尿からの排泄が減少しており、代謝経路の飽和を示唆しています。

環境毒性: HEAは水生生物に対して強い毒性を示す一方で、生分解性が高く、生物蓄積性は低いと考えられています。

まとめ

アクリル酸2-ヒドロキシエチルは、様々な工業製品に使用される有用な化学物質ですが、高い毒性を有しています。そのため、取り扱いにおいては、適切な安全対策を講じる必要があります。具体的には、作業環境の改善、個人防護具の着用、適切な廃棄処理などが重要です。さらに、環境への影響についても配慮する必要があります。

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