アコライツ・プロテクション・エージェンシー

アコライツ・プロテクション・エージェンシー（APA）: プロレス界の用心棒タッグチームの物語

ジ・アコライツ・プロテクション・エージェンシー（APA）は、アメリカ合衆国のプロレス団体WWEにおいて、ブラッドショーとファルークという、対照的な個性を持つ二人のレスラーによって結成されたタッグチームです。異なる人種、異なる経歴を持つ二人の組み合わせは、プロレスファンの注目を集め、独特の存在感を放っていました。日本語字幕放送では「アコライツ警備保障」と翻訳され、その名前が示す通り、彼らは独特のギミックを武器に活躍しました。

ファルークは、かつて黒人レスラーを中心としたユニット「ネーション・オブ・ドミネーション」のリーダーとしてWWF（後のWWE）で活躍していました。しかし、ザ・ロックの台頭によりリーダーの座を追われ、チームを離れることになります。一方、ブラッドショーは当時まだ若手であり、パートナーの離脱などもあり苦戦を強いられていました。

1998年10月、二人はザ・ジャッカルのマネージメントの下で「ザ・ヘルズ・ヘンチメン」というヒール（悪役）のタッグチームを結成します。その後「ジ・アコライツ」と改名し、ジャッカルがWWFを去った後、1999年には、ジ・アンダーテイカー率いる「ミニストリー・オブ・ダークネス」に加入。怪奇派レスラーとして、Xパック&ケインやハーディー・ボーイズなどの強豪チームを相手に世界タッグ王座を獲得するなど、大きな成功を収めます。

ミニストリーが解散した後、2000年からは「アコライツ・プロテクション・エージェンシー（APA）」を名乗り、用心棒稼業を始めるという新たなギミックを採用。バックステージに事務所を構え、酒と葉巻と喧嘩とポーカーに明け暮れる荒くれ者ぶりで人気を博し、ベビーフェイス（正義のレスラー）へと転向します。

ビッグ・ボスマン＆ブル・ブキャナン、エッジ＆クリスチャン、ダッドリー・ボーイズなど、数々のタッグチームと激闘を繰り広げ、女子プロレスラーのジャクリーンを一時的にメンバーに加えるなど、常に話題を提供し続けました。 その傍若無人な振る舞いは、スティーブン・リチャーズ率いる検閲ユニットRTCとの抗争に発展し、レッスルマニア17ではタズと組んでRTCのメンバーと対戦、勝利を収めています。WCW/ECW連合軍のアライアンスが侵攻した際にも、真っ先に戦いを挑むなど、WWEを代表するタッグチームとして存在感を示しました。

しかし、2002年の2リーグ制発足に伴うドラフトで、ブラッドショーはRAW、ファルークはスマックダウン所属となり、チームは解散。ファルークはロン・シモンズに戻りロード・エージェントに転身、ブラッドショーはカウボーイギミックに戻りシングルプレイヤーとして活躍しますが、怪我により戦線を離脱します。

2003年にブラッドショーがスマックダウンに復帰し、APAが再結成。FBIやバシャム・ブラザーズと抗争を展開し、同年7月にはAPA主催の酒場喧嘩バトルロイヤルが開催されるなど、再び人気を博しました。しかし、ファルークの解雇（体調悪化による事実上の引退）により、再びチームは解散。ブラッドショーはその後、証券アナリストギミックのJBLとしてWWE王座を獲得するなど、シングルプレイヤーとして成功を収めます。

腰の負傷悪化のため、ブラッドショーはセミリタイアして解説者に転身。ファルークはRAWにスポット参戦する形で復帰を果たし、2007年にはホーンズワグルの助っ人として、APAが一日限りの復活を遂げます。ブラッドショーは2009年のレッスルマニア25を最後に引退。その後、2012年のRAW1000回記念放送で、APAとして二人揃って登場し、ファンの記憶に再び刻まれることとなりました。

APAのバックステージオフィスは、自立式のドア枠だけが設置された独特の空間で、ファルークとブラッドショーが缶ビールを飲みながらポーカーに興じる姿が印象的でした。事務所への出入りには厳格なルールがあり、ドアを開けて入ること、出て行く際にはドアを閉めて帰ることが求められていました。スマックダウンでnWoの襲撃を受け破壊された後も、翌週のRAWで、会場が移動しているにもかかわらず、壊れたままの状態だったという逸話も残っています。

WWF/WWE世界タッグ王座を3回、OVW南部タッグ王座を1回、MCW南部タッグ王座を1回獲得するなど、数々のタイトルを獲得したAPA。個性的なギミック、数々の名勝負、そして二人のレスラーの絆は、多くのプロレスファンに深い印象を残し、プロレス史に名を残すタッグチームとして記憶されています。

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