アステュアギュイア

アステュアギュイア（古希: Ἀστυάγυια, Astyagyia）は、古代ギリシア神話の世界にその名を残す女性です。彼女は、テッサリアー地方に古くから居住していたと伝えられる伝説的な部族、ラピテース族の王ヒュプセウスの娘として生まれました。

ヒュプセウスは、このラピテース族を統治する有力な王であり、アステュアギュイアは王家の血筋を引く者でした。彼女にはキューレーネーとテミストーという姉妹がいました。姉妹たちもまた、それぞれ神話の中で独自の役割を果たしています。例えば、キューレーネーは美しい狩人として知られ、神アポローンに愛されて北アフリカのリビア地方へ連れ去られたという伝説があります。テミストーもまた、河神ペネイオスの息子であるマケドニア王キューケーウスと結ばれたとされています。

アステュアギュイア自身は、同じくラピテース族の王であったペリパースと結婚しました。この結婚は、ラピテース族内の有力な家系を結びつけるものであったと考えられます。ペリパースとの間に、アステュアギュイアは多くの子供をもうけました。彼女が生んだ子供は合計8人に上ると伝えられています。この8人の子供たちは、それぞれラピテース族の中で新たな家系を築く礎となった可能性があり、彼女は一族の繁栄に貢献した重要な母性的な存在と言えます。

アステュアギュイアの子供たちの中で、特に系譜上で重要な位置を占めるのが、長男であるアンティオーンです。アンティオーンは、アステュアギュイアとペリパースの血筋を受け継ぎ、次の世代へとその流れを繋ぎました。そして、このアンティオーンの子として、ギリシア神話において非常に有名な人物であるイクシーオーンが生まれます。

イクシーオーンは、神々に対する冒涜的な行いや、半人半馬のケンタウロス族の誕生に深く関わったことで知られています。ゼウス神に対する不敬な振る舞いが原因で、彼は永遠に燃え盛る車輪に縛り付けられるという恐ろしい罰を受けることになりました。アステュアギュイアは、この悲劇的な運命を辿るイクシーオーンの祖母にあたります。

このように、アステュアギュイア自身の物語が神話の中心に据えられることは稀ですが、彼女はラピテース族の王統、特にイクシーオーンのような重要な人物を生み出す家系の系譜を語る上で、欠かせない結節点となっています。父ヒュプセウスから受け継いだラピテース族の血筋を、夫ペリパースとの間に設けた子供たち、特にアンティオーンを通じて孫イクシーオーンへと確かに繋いだ女性として、アステュアギュイアの名前は神話の系図の中に記されています。彼女の存在は、古代ギリシア人が部族や王家の繋がりをどのように語り継いだかを知る上での一端を示唆しています。

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