アンティオーン

アンティオーン

アンティオーン（古希: Ἀντίων）は、古代ギリシャ神話にその名が伝えられる人物です。長音を省略し、アンティオンと表記されることもあります。彼は主に、有名な英雄イクシーオーンの父親として知られています。

シケリア出身の歴史家・神話作家ディオドーロスによると、アンティオーンはテッサリアー地方に居住していたとされるラピテース族の一員でした。彼の父親はラピテース族の王ペリパースであり、母親はヒュリエウスの娘であるアステュアギュイアであると記されています。アステュアギュイアとペリパースの間には、アンティオーンを含めて合計八人の息子がいたとされ、アンティオーンはその中で最年長にあたる人物であったと伝えられています。

アンティオーンは、アミュターオーンの娘ペリメーレーを妻に迎えました。そして、このアンティオーンとペリメーレーの間に生まれたのが、後のラピテース族の王となるイクシーオーンであるとされています。イクシーオーンは神話において、神々に対する重大な罪を犯した人物として非常に有名であり、その系譜上の父としてアンティオーンの名が登場します。

ただし、英雄イクシーオーンの父親については、古代の伝承において複数の異なる説が存在します。アンティオーンを父とする説が広く知られていますが、それ以外にも、

戦いの神アレース
ペイシオーン
プレギュアース
レオンテウス

といった、他の神や人物がイクシーオーンの父であるとする伝承も存在します。これらの異説は、神話が様々な地域や時代において多様な形で語り継がれてきた結果であり、特定の英雄や人物の系譜が一つに定まらない、古代ギリシャ神話の複雑な様相を示す一例と言えます。

アンティオーン自身は、ラピテース族がケンタウロス族と繰り広げた有名な戦いなど、神話の主要なエピソードにおいて中心的な役割を果たす人物として具体的に描写されることは稀です。しかし、彼の息子イクシーオーンが神話史において重要な位置を占めることから、その系譜を繋ぐ存在として、アンティオーンは名の知られた人物となっています。特にディオドーロスが詳細な家族構成と共に彼の名を挙げていることは、ラピテース族の王家の系譜を理解する上で貴重な情報源となります。

このように、アンティオーンは自らが物語の中心となることはなくとも、著名な息子イクシーオーンを介して神話世界にその名を刻んでおり、特に系譜や家族関係をたどる上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

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