ペリパース

ペリパース（Περίφας）

ペリパース（長母音を省略してペリパスとも表記）という名は、古代ギリシアの神話において、いくつかの異なる人物に用いられています。その中でも特に著名なのは、アッティカの王、ラピテース族の一員、アイトーリアの戦士、そしてアンキーセースの伝令使として語られる人物たちです。以下に、それぞれのペリパースについて詳しく説明します。

アッティカの王ペリパース

アッティカ地方を、伝説上の最初の王ケクロプスが支配する以前に統治したとされる王です。彼は大地から生まれた存在と伝えられています。神話によれば、このペリパースは太陽神アポローンを深く敬愛し、公正で優れた治世を行いました。その統治があまりに素晴らしいものだったため、人々は最高神ゼウスへの祭祀をやめ、ペリパースそのものをゼウスとして崇拝し始めました。この状況はゼウスの激しい怒りを招き、ゼウスはペリパースを雷霆で滅ぼそうとします。しかし、ペリパースがアポローンを篤く信仰していることを知っていたアポローンは、ゼウスに彼の命だけは奪わないよう懇願しました。このアポローンの嘆願を聞き入れたゼウスは、ペリパースのもとを訪れ、彼の敬虔さを慮って罰を軽減します。ペリパースは鳥類の王であるワシに変えられ、ゼウスの玉座の傍らに仕えることを許されました。また、ペリパースの妻ペーネー（またはペーネ）も夫と同様に鳥への変身を願い、吉兆を告げることで知られるハヤブサに変えられたと伝えられています。ローマの詩人オウィディウスも、その著書『変身物語』の中で、このアッティカの王ペリパースとその妻が雌雄のワシに姿を変えた出来事に言及しています。

ラピテースの子ペリパース

このペリパースは、テッサリア地方の伝説的な部族であるラピテース族の王ラピテースと、エウリュノモスの娘オルシノメーの間に生まれた息子です。彼はポルバースという兄弟がいました。ペリパースはヒュプセウスの娘アステュアギュイアを妻とし、アンティオーンを含む8人の子供をもうけました。彼の息子アンティオーンはアミュターオーンの娘ペリメーレーと結ばれ、有名なイクシーオーンの父となったと系譜は語ります。

オンケーシオスの子ペリパース

このペリパースは、アイトーリア人のオンケーシオスの子です。彼は非常に体が大きく力強い戦士でした。トロイア戦争が勃発した際、彼はアイトーリアの王トアースに率いられてギリシア連合軍の一員として参加しました。しかし、戦闘の初日、彼は戦場において軍神アレースと遭遇し、その手にかかって命を落としました。偶然にも、このペリパースを討ったアレースは、直後に英雄ディオメーデースによって傷つけられ、戦場から退いてオリュンポス山へ逃げ帰っています。

エピュトスの子ペリパース

このペリパースは、エピュトスの子とされる人物です。彼はトロイアの英雄アンキーセースに長年にわたり仕えた伝令使でした。トロイア戦争における激戦の一つ、パトロクロスの遺体をめぐるギリシア軍とトロイア軍の攻防の最中、神々が戦況に関与しました。この時、太陽神アポローンはペリパースの姿を借りてトロイアの英雄アイネイアースに近づき、彼を激励したと伝えられています。

その他のペリパース

上記の主要な人物たちの他にも、以下のようなペリパースという名の人物が神話に登場します。

アイギュプトスの息子の一人。
カリュドーン王オイネウスの息子の一人。
* オデュッセウスの妻ペーネロペーに求婚した多くの男たちの一人。

これらの人物はいずれも名前が同じですが、それぞれ異なる出自や物語を持つ、ギリシア神話における同名異人の典型的な例と言えます。

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