アストラル (競走馬)

アストラル：日本競馬史に輝く名牝とその血統

アストラルは、日本を代表する競走馬の一頭として知られています。1927年、まだ4歳の若さで、当時最高峰の競走の一つであった帝室御賞典と、濠抽混合（現在の目黒記念の前身）を制覇するという偉業を達成しました。

その競走成績もさることながら、アストラルは繁殖牝馬としても類まれな成功を収めました。彼女の子孫には、日本ダービー優勝馬カブトヤマ、ガヴァナーをはじめ、数々の重賞勝ち馬が名を連ねています。さらに、その子孫には最優秀古牝馬に輝いたチェリオや最優秀3歳牡馬マツカゼオーといった名馬も輩出しました。現在でも、最優秀古牡馬ニッポーテイオーやタレンティドガールといった活躍馬の母系を遡ると、アストラルの名に行き着きます。

アストラルの血統は、母系に小岩井農場系の種義を持ち、父は下総御料牧場の活躍種牡馬チャペルブラムプトンです。興味深いことに、アストラルの全弟であるハクヨシも、帝室御賞典を制覇しています。この兄弟による帝室御賞典制覇は、競馬史において特筆すべき出来事です。

アストラルの競走生活は華々しいものでした。4歳秋に阪神競馬場でデビューした後、東京競馬場に活躍の場を移します。そこで、帝室御賞典で2着、連合二哩で2着と好成績を収めました。そして、6歳の春には念願の帝室御賞典優勝を果たし、秋には濠抽混合をレコードタイムで制し、輝かしい競走生活に幕を閉じました。

引退後、アストラルはかつて祖母のビューチフルドリーマーを繋養していた小岩井農場に買い戻されます。これは、小岩井農場の業績回復の切り札として期待されたためです。ここで、英国から輸入された新種牡馬シアンモアとの間に生まれた産駒が、カブトヤマやガヴァナーを始めとする数々の名馬であり、その子孫にはチェリオやニッポーテイオーといった、現代競馬においてもその名を知られる馬がいます。

アストラルの誕生秘話も興味深いものです。チャペルブラムプトンの初年度産駒として3歳の時に競り市に出品されましたが、当時は父であるチャペルブラムプトンはまだ無名であり、アストラル自身も貧弱な体格であったため、わずか1350円という低価格で落札されました。しかし、尾形藤吉の推薦によって大馬主の多賀一が購入し、その後高井治兵衛氏に譲渡されたという経緯があります。

デビュー前、アストラルは体が弱かったため、高価なアメリカ燕麦を与えられ、丹念に育成されました。デビュー時には、同じチャペルブラムプトンの初年度産駒であるトニーやチャペルが活躍しており、アストラルはそれらと共にチャペルブラムプトンの代表産駒として、下総御料牧場の黄金時代を築く重要な役割を果たしました。

アストラルの産駒は、その才能を受け継ぎ、数々の競走で輝かしい成績を残しました。代表的な産駒には、前述の日本ダービー馬カブトヤマ、ガヴァナー、天皇賞を制したロツキーモアーなどがいます。他にも、中山記念を制したファインモアや、帝室御賞典で2着、3着に入ったミスアストラル、シャイニングサンなどもアストラルの優れた繁殖能力を示す例です。

アストラルの血統は、現在でも多くの競走馬に受け継がれており、日本競馬の歴史に大きな影響を与え続けています。その華々しい競走成績、類まれな繁殖能力、そしてドラマチックな生い立ち—アストラルは、まさに伝説的名牝と言えるでしょう。彼女の血統は、これからも日本の競馬界を彩り続けることでしょう。

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