アストラル投射

アストラル投射

アストラル投射は、秘教の文脈で使われる体外離脱を表す用語です。これは、意識や霊魂であるとされる「アストラル体」が肉体から離れ、外部の世界を旅するという概念に基づいています。「アストラル旅行」「幽体離脱」といった別称でも知られています。体外離脱に類する考えは古くから多様な文化に存在しますが、「アストラル投射」という現代的な呼称は19世紀に神智学者によって広められました。夢や瞑想、あるいは特定の精神状態下で類似体験が報告されることもあります。しかし、意識が肉体から独立して存在し、外部を認識できるという科学的証拠はなく、一般的に疑似科学と見なされています。

アストラル投射という言葉は、文脈によって異なる意味合いで使われることがあります。古典的には霊的な領域への旅を指しましたが、より広くは物質世界に近い非物理的な領域を移動する体験を意味するようになりました。神智学の一部では、物質界に近い移動をエーテル投射、物質界とは別の次元であるアストラル界での移動をアストラル投射として区別します。エーテル投射は現実環境に関わる場合がある一方、アストラル投射では時間感覚の変化や現実とは異なる抽象的な領域を訪れる場合があるといわれます。体外離脱中の非物質体は、肉体と「銀の紐」で繋がっていると認識される体験談が多く語られ、「落下する夢」との関連も指摘されます。アストラル投射の経験者は、多様な様相を持つ非日常的な領域を訪れると語り、中には宇宙的な知識の記録とされる「アカシックレコード」へのアクセスや、夢の世界との関連を述べる人もいます。アストラル界の構造についても様々な説があります。

体外離脱や魂の旅に関する思想は、世界各地の伝統に見られます。エマヌエル・スヴェーデンボリは自身の体験を詳細に記録しました。西洋のヘルメス主義や新プラトン主義、神智学などでは、アストラル体を微細身と考え、アストラル界を霊的な存在が住まう中間世界としました。心霊主義では「銀の紐」が語られ、聖書の記述に関連付けられることもあります。古代エジプトでは魂（バー）がカーを通じて肉体外へ移動できるとされ、中国の道教やインドのヒンドゥー教にも類似の概念が存在します。日本では、魂が肉体から離れて現れる「生霊」の信仰があります。イヌイットやアマゾンのシャーマニズムでも、シャーマンが魂の飛行を行うと信じられています。

20世紀にはロバート・モンローが「OBE」という言葉を広め、モンロー研究所を設立するなど、多くの提唱者が現れました。オリバー・フォックス、シルヴァン・マルドゥーン、ヘレワード・キャリントン、ロバート・ブルースなども知られています。また、「ソウル・トラベル」は、Surat Shabd Yogaやエッカンカーといった霊的な教えの中で重視され、魂が肉体を離れて神聖な領域へ向かう旅とされます。瞑想などの技法によって達成されると考えられています。エドガー・ケイシーもアストラル旅行を実践した人物として知られています。オカルトの伝統では、トランス状態や視覚化による「光の体」の構築、パスワーキングといった技法が用いられます。

現在の心理学および認知科学では、アストラル投射を含む体外離脱体験は、解離現象や特定の神経生理学的状態によって引き起こされる主観的な体験として説明されることが一般的です。意識が肉体から分離して客観的な外部世界を認識できるという主張を裏付ける科学的な証拠は確認されておらず、疑似科学と見なされています。脳への電気刺激や幻覚剤の使用によって類似体験が生じる例は報告されますが、これらは個人的な体験談に留まります。超心理学の研究でも、信頼できる結果は得られていません。懐疑論者は、アストラル投射は単なる空想や明晰夢、錯覚、あるいは心理的な要因によって説明できると指摘しています。体験談は確証バイアスや偶然による可能性が議論されており、遠隔地の情報を正確に知る能力も実証されていません。

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