アストンマーティン・ヴァンテージ GT2

アストンマーティン・ヴァンテージ GT2：高性能GTレーシングカーの進化

アストンマーティン・ヴァンテージ GT2は、アストンマーティンが誇るV8ヴァンテージシリーズの頂点に立つレーシングマシンです。標準的なレース用燃料に加え、E85バイオエタノールにも対応できる設計となっており、高い環境適応性を備えています。2008年のデビュー以来、FIA GT選手権、アメリカン・ル・マン・シリーズ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、そして世界中のモータースポーツファンが注目するル・マン24時間レースなど、数々の主要レースシリーズでその存在感を示してきました。

パワフルな心臓部と軽量な車体

ヴァンテージ GT2のパワーソースは、市販モデルの4.3L V8エンジンをベースに開発された4.5L V8エンジンです。ドライサンプ方式を採用し、シリンダーブロックやクランクシャフトは市販モデルを流用しつつ、シリンダーヘッド、コンロッド、バルブ、カムシャフト、エキゾーストシステムなどは、レース専用に設計された高性能コンポーネントに置き換えられています。

軽量化も徹底的に追求されており、市販モデルで使用されている接着アルミニウムシャーシに代わり、ルーフを除くボディパネルにはカーボンファイバーが採用されています。さらに、空力性能の向上に大きく貢献するフロントスプリッター、リアディフューザー、リアウィング、そしてフラットフロアといった空力パーツを装備することで、高速走行時における安定性とダウンフォースの向上を実現しています。

2012年のアップグレードとGTEバージョン

2012年、アストンマーティン・レーシングは、LM-GTEレギュレーションへの適合を目指し、ヴァンテージ GT2の改良に着手。ヴァンテージ GTEとして生まれ変わったこのマシンは、整備性の向上を主な目的として開発されました。

具体的には、フロント周りのモジュラー構造化により、エンジン交換作業時間を従来の4時間以上から1時間未満にまで短縮。これにより、メンテナンス効率の大幅な向上が達成されました。リアサスペンションとサブフレームも改良され、メンテナンス性と信頼性の向上が図られています。また、安全性の向上にも配慮し、燃料タンクはロールケージ内に移設されるなど、万が一の事故発生時におけるリスク軽減策が施されています。

さらに、CFD解析による空力特性の最適化を基にした新しいフロントバンパー、サイドスカート、リアウイングの採用、バッテリーなどによる軽量化、ドライバーの冷却性能向上など、多岐にわたる改良が実施されました。

輝かしいレース戦績

ヴァンテージ GT2は、2008年、ALMSロングビーチでポール・ドレイソンとジョニー・コッカーのドライブでレースデビュー。その後、ル・マンシリーズ、インターコンチネンタル・ル・マンカップなど、世界中の様々なレースシリーズに参戦し、その高いポテンシャルを証明してきました。

特に、2012年以降は世界耐久選手権(WEC)にワークスチームとして参戦し、2014年にはLM-GTEAmクラスで、2016年にはLM-GTEProクラスで、ドライバーズタイトルとチームタイトルのダブルタイトルを獲得するなど、数々の成功を収めました。これらの戦績は、ヴァンテージ GT2の高い性能と信頼性の証であり、アストンマーティンレーシングの技術力の高さを見事に示しています。

アストンマーティン・ヴァンテージ GT2は、その卓越した性能と改良された整備性、そして柔軟な燃料対応能力によって、GTレースの歴史に大きな足跡を残した名車と言えるでしょう。

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