アスモデウス

アスモデウス（Asmodeus）

アスモデウスはユダヤ教およびキリスト教の悪魔の一つであり、特に旧約聖書外典の『トビト記』にその名が見られます。この悪魔のラテン語名はアスモデウスですが、ギリシア語ではアスモダイオス（Ἀσμοδαῖος）と呼ばれ、ヘブライ語に由来する名前も存在します。アスモデウスは、サラという美しい女性に取り憑き、彼女の結婚相手を次々に殺害することで知られています。

アスモデウスの語源と歴史

アスモデウスという名前の源は、ゾロアスター教の悪魔アエーシュマにあります。この名はギリシア語やヘブライ語に翻訳され、さまざまな形を取りました。アエーシュマの名前に含まれる「怒れる悪魔」という意味がアスモデウスにも引き継がれたとされています。さらに、ヘブライ語では「滅ぼす」や「破壊する」という意味を持つ語根にも由来するという説もありますが、これはおそらく民間伝承に基づいた考え方です。

『トビト記』における物語

『トビト記』によると、アスモデウスはサラに取り憑き、彼女が結婚するたびにその夫を初夜に絞め殺していました。この不幸は七回続いたため、サラは悪魔憑きの娘と呼ばれるようになりました。しかし、あるときトビアという青年がアザリアの助言を受け、サラと結婚することになりました。アザリアは実際には大天使ラファエルであり、彼はトビアに魚の内臓を香炉に入れるよう指示しました。その通りにした結果、アスモデウスは恐れをなして逃げ出し、ラファエルによって捕らえられました。アスモデウスはサラには手を出さず、ただ夫たちを襲ったのです。

悪魔憑き事件とアスモデウス

アスモデウスは、ルーダンの悪魔憑き事件にも関与していました。この事件では修道院長ジャンヌ・デ・ザンジュに取り憑き、悪魔払いの後に契約書を残し、明日の午後5時に彼女から離れると述べたとされています。

グリモワールにおけるアスモデウス

悪魔学によると、アスモデウスは元々激怒と情欲を象徴する魔神であり、キリスト教では色欲の象徴とされます。彼は72の悪霊の頭目の一人として挙げられ、79の軍団を指揮する王とされています。彼の姿は、牛や人の顔、羊の頭、ガチョウの足、毒蛇の尻尾を持つとされています。アスモデウスは尊重されると喜んで財宝を与え、秘術を教えてくれると言われています。

文学作品でのアスモデウスの描かれ方

アスモデウスは、多くの文学作品にも登場します。たとえば、1641年にスペインの作家ベレス・デ・ゲバラによって書かれた『跛の悪魔』では、風刺の天才として描かれています。また、1707年にフランスのアラン＝ルネ・ルサージュが書いた同名の作品では、主人公のドン・クレオファスがアスモデウスの力を借りて奇譚を体験する物語が展開されます。

アスモデウスの文化的影響

アスモデウスは、悪魔に関する多くの伝説や物語に影響を与えてきました。彼は特に都市探訪記事や挿絵本の中で、独特のキャラクターや存在感を示しています。19世紀には、アスモデウスの名を冠した都市探訪記事が多く刊行され、その影響は今日まで続いています。

アスモデウスは、ただの悪を象徴する存在ではなく、多面的なキャラクターとして様々な文化的文脈の中で再解釈されてきました。そのため、彼の存在は今でも多くの人々の興味を引き続けています。

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