アズキナシ

アズキナシ（小豆梨）

アズキナシ（学名: Aria alnifolia）は、バラ科アズキナシ属に分類される落葉高木です。山地に自生し、別名としてカタスギ、ハカリノメなどがあります。ここでは、アズキナシの生態、特徴、利用法について詳しく解説します。

名称の由来

アズキナシの名前の由来には諸説あります。

果実が小豆ほどの大きさであること
果実の表面に梨のような皮目があること
実の形が小豆に似ており、花が梨の花に似ていること

別名のハカリノメは、若い枝にある秤の目盛りのような皮目に由来します。地方によっては、カマツカ、シロブナ、ヤマナシなどの名で呼ばれることもあります。

分布と生育環境

アズキナシは、日本国内では北海道から九州にかけて分布し、低山地の乾燥した尾根筋などに生育します。北海道では平野から山地まで見られますが、本州以南では山地に限られます。国外では、千島列島、朝鮮半島、中国東北部、ウスリー地方に分布し、これらの地域では低地の平野でも見られます。

アズキナシは山野にまばらに自生し、まとまった林を形成することは稀です。これは、野鳥が果実を食べて種子を散布するためと考えられています。

形態と生態

アズキナシは落葉広葉樹の中高木で、樹高は18 - 20メートル、幹の直径は70センチメートルに達することがあります。樹皮は灰黒褐色でざらつき、老木になると縦に細長い裂け目ができます。若い枝は紫黒色で、小さな白い皮目があります。

葉は単葉で互生し、卵形または倒卵形で、長さ5 - 10センチメートル、幅3 - 7センチメートルです。葉の縁にはやや粗い重鋸歯があり、葉の裏面に突出する側脈が目立ちます。秋には紅葉し、黄色から橙色に色づきます。

花期は5 - 6月で、新しい枝先に複散房花序を出し、直径1.3 - 1.6センチメートルの白い花を5 - 20個つけます。花は梨の花に似ていますが、やや小さいです。

果実は10月頃に赤く熟し、長さ8 - 10ミリメートル、幅6 - 8ミリメートルの楕円形になります。果実は野鳥の餌となり、冬を越して春先まで枝に残っていることが多いです。果実の中には通常4個の種子が入っています。

冬芽は長卵形で紅紫褐色をしており、4-6枚の芽鱗に包まれています。

利用

アズキナシは庭木として利用され、春の白い花、秋の紅葉が楽しめます。葉が小さく繊細な雰囲気があり、成長が遅いことから人気があります。日当たりの良い場所から半日陰の場所で育てられます。

アズキナシの材は硬くて有用で、建築材や家具材、靴型などに使われていました。また、樹皮からは染料を採取できます。

近縁種

フギレアズキナシ (Micromeles alnifolia var. lobulata)：葉の縁が浅く裂けている。
オクシモアズキナシ (Sorbus alnifolia var. submollis)：葉の下面に軟毛が密生する。
オオバアズキナシ (Sorbus alnifolia f. macrophylla)：葉が大きい。
マルバアズキナシ (Sorbus alnifolia f. tiliifollia)：実が大きい。

参考文献

正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』講談社、2012年。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽』誠文堂新光社、2014年。
辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。
山﨑誠子『植栽大図鑑［改訂版］』エクスナレッジ、2019年。
佐竹義輔ほか編『日本の野生植物 木本Ⅰ』平凡社、1989年。
茂木透、石井英美ほか『樹に咲く花（離弁花1） 山渓ハンディ図鑑3』山と溪谷社、2000年。

関連項目

ウラジロノキ
ナナカマド
* ヤマナシ

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