アズ・ティアーズ・ゴー・バイ (涙あふれて)

アズ・ティアーズ・ゴー・バイ：ローリング・ストーンズとマリアンヌ・フェイスフルを繋ぐ名曲

ローリング・ストーンズの楽曲「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ (涙あふれて)」は、1964年、マリアンヌ・フェイスフルのデビュー曲として書き下ろされた曲です。作曲はミック・ジャガー、キース・リチャーズ、そして彼らのマネージャーだったアンドリュー・ルーグ・オールダムという、意外な組み合わせによるものです。

当初のタイトルは映画『カサブランカ』の主題歌と同じ「As Time Goes By」でしたが、同名曲の存在から改題されました。キース・リチャーズは当初この曲を酷評したものの、オールダムはヒットすると確信していました。結果、この曲は予想どおりヒットを記録し、大きな収益を生みました。しかし、ジャガーとリチャーズは皮肉にも「古いロープのための金」と表現したと伝えられています。

ローリング・ストーンズによるレコーディングは、キース・リチャーズのアコースティックギターとストリングス四重奏によるシンプルな構成です。ストリングスアレンジはマイク・リーンダーが担当し、後にビートルズの「シーズ・リーヴィング・ホーム」のアレンジも手がけることになります。このストリングスを用いたアレンジは、ビートルズの「イエスタデイ」を模倣したとの批判も招くこととなりました。

イギリスでは、1966年2月にアルバム『19回目の神経衰弱』のカップリング曲としてリリースされましたが、アメリカでは同年12月にシングルA面としてリリースされ、ビルボードHOT 100で最高6位を記録するヒットとなりました。

興味深いことに、この曲はイタリア語バージョンも存在します。ビートルズのドイツ語での楽曲リリースの影響を受けたものと考えられており、1966年5月にイタリア・デッカより「CON LE MIE LACRIME」のタイトルでリリースされました。イタリア語への翻訳はイギリス在住の詩人ダンパによるもので、クレジットにも彼の名前が加えられています。バックの演奏はハープシコードなどを使用した別テイクとなっています。

ライブでは長らく演奏されることはありませんでしたが、2008年のマーティン・スコセッシ監督によるドキュメンタリー映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』とそのサウンドトラックに、ライブバージョンが初収録されました。ギターワールド誌が選ぶ「偉大なる12弦ギターソング」では14位にランクインするなど、現在でも高い評価を受けています。

様々なアルバムに収録されていますが、代表的なものを挙げると『ディッセンバーズ・チルドレン』(1965年)、『ビッグ・ヒッツ (ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)』(1966年)、『ホット・ロックス』(1972年)、『ロールド・ゴールド〜ヴェリー・ベスト・オブ・ザ・ローリング・ストーンズ』(1975年)、『シャイン・ア・ライト』(2008年)などがあります。

マリアンヌ・フェイスフルにとっても、「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」はデビュー曲として大きな成功をもたらしました。この楽曲の提供は、アンドリュー・ルーグ・オールダムとフェイスフルの当時の夫ジョン・ダンバーの繋がりがきっかけでした。この曲と他のヒット曲によって、彼女は一躍英国のポップアイドルとなりました。その後、ミック・ジャガーとの恋愛、ドラッグスキャンダル、破局など様々な経験を経て、声質が変化した彼女が再びこの曲をレコーディング、リリースし話題を呼びました。

このように、「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」は、ローリング・ストーンズとマリアンヌ・フェイスフルの両者にとって重要な楽曲であり、その誕生から現在まで、数々の興味深いエピソードに彩られた、まさに名曲と言えるでしょう。

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