アダド・ニラリ2世

アダド・ニラリ2世：新アッシリア帝国の礎を築いた王

アダド・ニラリ2世（在位：前911年-前891年）は、アッシリアの王であり、一般的に新アッシリア時代最初の王とされています。彼の治世は、アッシリア帝国の再興と拡大の時代であり、その後の強大な帝国の土台を築きました。

即位と初期の動乱

アダド・ニラリ2世は、アッシュル・ダン2世の息子として生まれました。王位を継承する際には、小規模な宮廷闘争があったと伝えられています。王位継承の混乱は、アッシリアの属国の反乱を誘発する可能性もありました。

領土拡大と安定化

アダド・ニラリ2世は、軍事的な才能を発揮し、周辺地域の平定に乗り出しました。彼はまず、名目的にアッシリアの支配下にあった地域を確実に支配下に置きました。前910年には、ハブール川とユーフラテス川の合流点でアラム人と戦い、これを征服して追放しました。これにより、ハブール川流域の安全を確保し、帝国の重要な資源地帯を掌握しました。

北方では、新ヒッタイトやフルリ人を平定し、帝国の北側の安全を確保しました。さらに、バビロニアにも侵攻し、シャマシュ・ムダミク王を二度にわたり打ち破りました。その結果、ディヤラ川北方の広大な領域と、中部メソポタミアのヒートやザンクを併合しました。治世の後半には、ナブー・シュマ・ウキン1世が治めるバビロニアから、さらに領土を獲得しました。

西方への遠征も行い、アラム人の都市Kadmuhやヌサイビン（ニシビス）を平定しました。これらの遠征によって、アダド・ニラリ2世は膨大な量の戦利品を獲得し、帝国の富を増大させました。

経済復興と交易路の拡大

アダド・ニラリ2世の治世は、古代オリエント全体の経済復興の時代と重なっています。この時代には、フェニキアやアラムの交易路が拡大し、アナトリア、リビア（第22王朝支配下のエジプト）、メソポタミア、地中海が結びつけられました。アッシリアは、これらの交易路を掌握することで、経済的な繁栄を享受しました。

リンム表と年代の確定

アダド・ニラリ2世の治世から、前7世紀半ばのアッシュルバニパルの治世までの完全なリンム表（一年任期で交代するリンム職の名前を記したリスト）が残されています。このリンム表のおかげで、アダド・ニラリ2世の治世第1年（前911年）を、古代オリエント史において正確に編年を復元できる最初の年とすることができました。ただし、『アッシリア王名表』は、一般にアダド・ニラリ2世より数世紀前までの期間において相当正確であると考えられており、学者たちは前12世紀後半のアッシュル・レシュ・イシ1世の時代まで共通した編年体系を用いています。

後継者と遺産

アダド・ニラリ2世の息子であるトゥクルティ・ニヌルタ2世も、父の跡を継いで敵国との戦いを続けました。アダド・ニラリ2世の治世は、新アッシリア帝国の基礎を築いた重要な時代であり、その後の帝国の拡大と繁栄に大きく貢献しました。

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