アダム・ダンカン

初代ダンカン子爵アダム・ダンカン：キャンパーダウンの海戦の英雄

1731年7月1日、スコットランドのルンディに生まれたアダム・ダンカンは、1746年に海軍に入隊。数々の戦いを経て、卓越した能力を発揮する将官へと成長しました。

海軍でのキャリア

ダンカンは、オーストリア継承戦争、七年戦争に参加。スループ艦トライアル、ショアハム、センチュリオンなど様々な艦船に勤務し、実戦経験を積み重ねました。特に七年戦争では、ロシュフォール遠征、ゴレー島の攻略、ブレストの封鎖など、重要な作戦に参加。キブロン湾の海戦では、昇進により艦を離れることとなりました。その後も、船団護衛や、ケッペルの座乗艦ヴァリアントでの勤務を通して、経験を深めました。ベル島の攻略やハバナ攻略にも参加しており、幅広い経験を積んだことがわかります。戦争終結後も、彼は海軍での職を求め続けました。

軍法会議とジブラルタル包囲戦

1777年には、スコットランド最高裁判所の首席裁判官の娘と結婚。その後、サフォーク、モナークに乗り組み、1779年にはウェサン島の海戦におけるケッペルの指揮を裁く軍法会議の委員に。この会議では、検察側の質問を幾度も遮り、公正な審理を心がけました。同年、ジブラルタル包囲戦に参加したモナークは、サン・ビセンテ岬の海戦で重要な役割を果たします。その後、ケッペルが海軍卿に就任した1782年にはブレニムに乗り組み、ハウ大艦隊の指揮下で、ジブラルタル包囲戦やスパーテル岬沖での戦闘に参加しました。その後もフォウドロイヤント、エドガーの指揮を執り、1787年には自らの旗艦を掲げ、1793年には中将、1795年には海軍大将に昇進しました。1795年には北海の最高指揮官に任命され、旗艦ヴェネラブルに旗を掲げました。

キャンパーダウンの海戦

1797年、イギリスはオランダ海軍の主力部隊を攻撃すべく、ダンカンを指揮官として、多くの艦船をグレート・ヤーマスに集結させました。しかし、スピットヘッドとノアの反乱により艦隊の出動は遅延。反乱は、賃上げと艦内環境改善を求める船員たちの要求が背景にありました。反乱が沈静化し、オランダ軍出航の知らせを受けると、ダンカンはヴェネラブルなど少数の艦艇で出航。巧妙な作戦で敵を欺き、オランダ艦隊を発見しました。オランダ艦隊は、浅瀬へ逃げる準備をしていたため、ダンカンは即座に攻撃を開始。イギリス艦隊はオランダ艦隊を挟み撃ちにし、退路を断ち切りました。これは当時の戦術書からは逸脱した大胆な決断でしたが、結果的にイギリスの決定的な勝利をもたらしました。この勝利は、イギリス海軍の威信を高め、船員たちの反乱がイギリス海軍の力を損なうことはなかったことを証明しました。

叙爵と晩年

キャンパーダウンの海戦での勝利の後、ダンカンはキャンパーダウン子爵に叙爵されました。彼はゴールドメダルを授与され、政府から多額の邸宅と数都市の市民権を授与されました。しかし、彼はさらに高い爵位を望む声もありました。1801年まで北海で指揮を執ったダンカンは、3年後の1804年8月4日、73歳で急死。ルンディに埋葬されました。

ダンカンにちなむもの

ダンカンを称える多くの地名や建造物が存在します。イギリス海軍の艦船、リーズのダンカンストリート、ロンドンの「アドミラル・ダンカン・パブ」、そしてかつてダンカン島と呼ばれたガラパゴス諸島のピンソン島など、現在もその功績は人々に記憶されています。1997年には、ダンディーに彼の像が建立されました。

アダム・ダンカンは、イギリス海軍史に輝く英雄の一人です。彼の勇敢さと決断力は、後世に大きな影響を与え続けています。彼の生涯は、卓越した指導力と、変化の激しい時代における海軍の重要性を物語っています。彼の功績は、単なる軍事的な勝利にとどまらず、イギリス海軍の士気向上や、国家の威信の維持という、より大きな意味を持っていたと言えるでしょう。

もう一度検索