グレート・ヤーマス

グレート・ヤーマス：歴史と自然が織りなすイングランド東部の港町

グレート・ヤーマスは、イングランド東部ノーフォーク州に位置する、ヤール川河口の海岸沿いの町です。ノリッジの東約30kmにあり、地元民からは単に「ヤーマス」と呼ばれています。北海とヤール川に挟まれた細い砂州に広がる町は、歴史的な町並みや魅力的な海岸リゾート地として知られています。

歴史：ローマ時代から現代まで

ヤーマスの歴史は古く、ローマ軍の駐屯地ガリアノヌムの近くに起源を持ちます。その後、シンク・ポーツの漁民たちが定住し、ノルマン征服以前には70人の市民を擁する町へと発展しました。中世には、王室からの特許状によって自治権を獲得し、ニシン漁業の中心地として繁栄しました。16世紀には海軍基地となり、その役割はその後も拡大していきました。

16世紀にはグラマースクールが開校し、教育の中心地としての側面も持ちました。19世紀には、腕木通信網を用いた海軍との連絡拠点としても機能しました。しかし、歴史の中では悲劇もありました。1845年には吊橋崩壊事故が発生し多数の死者を出しています。第一次、第二次世界大戦時には空襲を受けましたが、旧市街の多くは破壊を免れました。中世の城壁や塔の多くも現在に残っています。サウス・ケイ地区には、様々な時代の建築様式の商人会館が立ち並び、その奥には「ザ・ロウズ」と呼ばれる迷路のような路地が魅力的です。

近年は、洪水が大きな問題となっています。2006年には4回もの洪水に見舞われ、特に9月の洪水は甚大な被害をもたらしました。1953年の北海大洪水でも大きな被害を受けました。現在も洪水対策は重要な課題となっています。

地理と交通

グレート・ヤーマスは、ヘイヴン橋によってゴールストン、コボルム、サウスタウンと、ブレイドン橋によってA47、A149、A12道路と繋がっています。町は26.54平方キロメートルの広さがあり、2002年の人口は約47,288人でした。グレート・ヤーマス市街区域全体では約66,788人、さらにその周辺地域を含めると約92,500人の人口を抱えています。

自然：豊かな生態系

グレート・ヤーマスとその周辺には、多くの貴重な動植物が生息しています。埠頭にはニシズグロカモメのイギリス最大の繁殖地の一つがあります。ブレイドン・ウォーター三角江は、多くの渉禽類や水鳥の生息地として知られ、10万羽以上の鳥が越冬しています。この地域とハルヴァーゲート沼沢地は特別保護区に指定されており、RSPBなどの保護団体が保全活動に携わっています。

海岸の北ディーンズ地区は、砂丘植物の重要な生息地で、様々な鳥や蝶が生息しています。近くの共同墓地は渡り鳥の中継地として知られ、珍しい鳥や昆虫を観察することができます。沖合では、ハイイロアザラシやゼニガタアザラシ、様々な海鳥を見ることができます。

救命艇基地

グレート・ヤーマスには、1802年以降救命艇が配備されており、1857年には王立救命艇協会（RNLI）が運営を引き継ぎました。現在も、トレント級救命艇「サマーベータ」とB級内海用救命艇「シーホースIV」が運用されています。

著名な出身者

グレート・ヤーマスは、医学者、発明家、作家など、様々な分野で活躍した著名人を輩出しています。例えば、内科医・著述家のトマス・ガードルストーン、海上救命装備や近代消火器を発明したキャプテン・ジョージ・ウィリアム・マンビー、ヴィクトリア朝の外科医サー・ジェームズ・パジェット、『黒馬物語』の著者アンナ・シュウエルなどが挙げられます。

まとめ

グレート・ヤーマスは、歴史、自然、文化が融合した魅力的な町です。中世の町並みから近代的な港湾施設まで、様々な表情を見せるこの町は、訪れる人々に多くの発見を与えてくれるでしょう。しかし、洪水対策など、現代社会が抱える課題にも向き合わなければならない側面も持ち合わせています。

もう一度検索