アダルト・ウルフガイ

アダルト・ウルフガイ・シリーズ：ハードボイルドな狼男の物語

平井和正によるSFハードボイルド小説「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」は、大人の魅力あふれる狼男・犬神明を主人公とした、独特の世界観と複雑な歴史を持つ作品群です。同作者の少年向け作品『ウルフガイ』とは異なる、シニカルで大人向けの作風で人気を博しました。

シリーズの誕生と展開

シリーズの始まりは、1969年に発表された「狼男だよ」です。その後、『プレイコミック』、『ボーイズライフ』、『小説推理』など様々な雑誌に掲載され、立風書房、早川書房、そして祥伝社ノン・ノベルと、複数の出版社から刊行されました。特に祥伝社ノン・ノベル版では「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」としてまとまり、シリーズとしての地位を確立しました。しかし、『GORO』誌に連載された『人狼天使 第III部 魔王の使者』（1979年）を最後に新作は発表されず、平井和正氏の2015年の逝去により未完となりました。その後も角川文庫、ハルキ文庫などから出版され、現在でも多くの読者に親しまれています。

アダルト犬神明：魅力的な主人公像

主人公・犬神明は、同作者の『ウルフガイ』シリーズの主人公とは異なる、30代の大人としての魅力を備えた狼男です。シニカルで大人の雰囲気を漂わせる性格は、少年時代の犬神明とは対照的。作者は、彼の外見を「痩せぎすにしたジャン＝ポール・ベルモンド」と表現しており、その独特の風貌が物語に深みを与えています。愛車は「ドブネズミ色」の510型ブルーバードSSSという、個性的なチョイスも魅力の一つです。

多様な展開と関連作品

本シリーズは小説のみならず、漫画や映画にも展開されました。ケン月影による漫画版『狼男だよ』『狼のバラード』は、原作を忠実に再現しつつ、成人向け描写を加えた点も特徴的です。かどたひろしによる『Wolf Guy』も、原作を基にアレンジを加えた作品として知られています。1975年には千葉真一主演による映画『ウルフガイ 燃えろ狼男』も公開されました。

さらに、平井和正の他の作品との関連も注目に値します。例えば、『スパイダーマン』の漫画版へのストーリー提供や、『8マン』、『サイボーグ・ブルース』といった作品との繋がりなど、彼の創作活動全体を理解する上で重要な要素となっています。また、『新幻魔大戦』、『真幻魔大戦』、『女神變生』、『月光魔術團』、『ウルフガイDNA』、『幻魔大戦DNA』、『幻魔大戦deep トルテック』といった作品にも、犬神明や関連するキャラクターが登場し、シリーズ全体の広がりを示しています。

出版における逸話

シリーズ最初の作品『狼男だよ』は、出版時に著者の許可なく編集者によって大幅な改稿が行われたという、興味深いエピソードがあります。この「狼男だよ」改竄事件は、平井和正と出版社との間で大きな紛争を引き起こし、出版業界に衝撃を与えました。この事件は、作家と出版社の関係、著作権の問題について改めて考えさせられる出来事でした。

まとめ

「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」は、魅力的な主人公、ハードボイルドな世界観、そして複雑な出版の歴史を持つ、唯一無二の作品群です。未完に終わったという点も、読者に強い印象を与え、多くの謎と魅力を残しています。平井和正の他の作品との繋がりも考慮すると、その世界観の深さと広がりは計り知れません。

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